核不拡散ニュース No.0112 2009.01.21
<GNEPの核不拡散影響評価について>
1.概要
2009年1月6日、米国エネルギー省(DOE)/国家核安全保障庁(NNSA)は、GNEPで検討されている核燃料サイクルオプションの核拡散リスクを検討する核不拡散影響評価(NPIS:Nonproliferation Impact Statement for the Global Nuclear Energy Partnership Programmatic Alternatives)のドラフトを公表した。
NPISは、DOEによる決定、計画、提案を内容とするものではなく、プログラム環境影響評価(PEIS)や他の文書とともに、GNEPに関する政策決定に資するものとされている。
米国が国内政策としてそれぞれの燃料サイクルオプションを採用する場合の核拡散リスクを政策的、技術、両方の観点から評価した点に特徴がある。政策的観点の中では特に国際的な影響が重視されている。
政策的評価に関しては、米国の核不拡散の政策目的として、1. 濃縮、再処理の更なる拡散の制限、2. 分離プルトニウムの蓄積の防止及び削減、3.核拡散抵抗性が高い原子炉及び核燃料サイクルの開発及び推進、4. 原子力の兵器目的での不正使用がないことを検認する観点からの国際保障措置の改善が挙げられている。
2.評価の結果
それぞれのオプションの評価の結果は添付の表に示す通りである。
3.NPISの評価
政権末期のこの時期に本評価が公表された意図は必ずしも明らかではないが、GNEPを推進したブッシュ政権の核不拡散の考え方を整理し、後世に残すという意図が感じられる。
本報告は個々の項目の比較だけで、全体として望ましいオプションを提示しているわけではないが、フルアクチニドリサイクルオプションの利点が強調されているのが目立つ。
特に、マイナーアクチニドのリサイクルも含む先進再処理能力を保持することにより、米国がバックエンドも含めた包括的な燃料サービスに参加することが可能になり、ひいては、原子力発電国が独自に濃縮、再処理技術の開発を行うインセンティブを抑制するメリットが強調されている。原子力発電の世界的拡大の潮流の中で、解決を要する喫緊の問題の一つは使用済燃料の処分問題であると考えられ、仮に再処理後の廃棄物も含めて使用済燃料の原燃料供給国あるいは第3国への引取りのスキームが出来れば、濃縮、再処理能力の開発をやめさせるのに有効な手段となる可能性が高い。その意味において、将来の米国の政策オプションの一つと考えられる。
従来の民主党政権(カーター政権、クリントン政権)の政策は、他国の再処理を防ぐ観点から自国での再処理の抑制に重点があり、本NPISで述べられている見解とは大きく異なるものである。世界的な原子力発電の拡大に伴う核拡散リスクの増大、米国自身の使用済燃料処分が進まないという現状の中で、オバマ政権が本問題に対し、いかなる政策判断を行うかが注目される。
【解説:政策調査室 山村】