【要旨】
核燃料の供給保証とは、現在、国際原子力機関(IAEA)を中心に、原子力の平和利用と核不拡散の両立を目的に議論されている概念であり、新興の原子力発電利用国(以下、新興国と略)が、核不拡散以外の政治的な理由により核燃料の供給を途絶された場合に、代替の燃料供給を受けることを可能にするものである。現在の議論の発端は、2003年10月にエルバラダイIAEA事務局長が、エコノミスト誌に、核不拡散の観点から濃縮や再処理は多国間管理(MNA:Multilateral Nuclear Approach)の施設でのみ行うよう制限すべしとの記事で、その後、事務局長の依頼を受けた専門家会合により報告書が纏められ、その中で供給保証はMNAの一つのアプローチとして位置づけられている。
この「核燃料供給保証」の枠組み構築に関しては、これまで、(1) 六カ国提案が主張するような濃縮事業者のバックアップを基本としたメカニズム、(2) 現物のLEU備蓄(核燃料バンク)の設立、(3) 濃縮役務を保証するものなど種々の提案がなされており、このうち、(2) について、現在、米国のシンクタンク「核脅威イニシアティブ(NTI)」提案に基づくIAEA核燃料バンクや米国の高濃縮ウランを希釈した低濃縮ウランの備蓄、露国アンガルスクの国際ウラン濃縮センター(IUEC)での低濃縮ウラン(LEU)備蓄が現実味を帯びつつあり、2008年IAEA総会でも、メカニズム構築の重要性が原子力先進国を中心に議論されているものの、供給保証メカニズムの発動条件などについて、具体的な枠組み構築に関しては合意は見られていない。その理由は何故か、その対応策はあるのか?
まず、核燃料供給保証メカニズムの構築は何故進まないのか、(1) 供給保証は核不拡散に寄与するものなのか、(2) 供給途絶は起こるものなのか、(3) NPT第IV条との関係、(4) 「持つ国」と「持たざる国」の二分化、(5) 原子力発電新興国への必要性、(6) 原子力産業界の立場、(7) 国際機関の役割、の7つの観点から考察した(添付参照)。次回、その2として、考えられる対応策について検討する。
【要旨】
核燃料の供給保証とは、現在、国際原子力機関(IAEA)を中心に、原子力の平和利用と核不拡散の両立を目的に議論されている概念であり、新興の原子力発電利用国(以下、新興国と略)が、核不拡散以外の政治的な理由により核燃料の供給を途絶された場合に、代替の燃料供給を受けることを可能にするものである。現在の議論の発端は、2003年10月にエルバラダイIAEA事務局長が、エコノミスト誌に、核不拡散の観点から濃縮や再処理は多国間管理(MNA:Multilateral Nuclear Approach)の施設でのみ行うよう制限すべしとの記事で、その後、事務局長の依頼を受けた専門家会合により報告書が纏められ、その中で供給保証はMNAの一つのアプローチとして位置づけられている。
この「核燃料供給保証」の枠組み構築に関しては、これまで、(1) 六カ国提案が主張するような濃縮事業者のバックアップを基本としたメカニズム、(2) 現物のLEU備蓄(核燃料バンク)の設立、(3) 濃縮役務を保証するものなど種々の提案がなされており、このうち、(2) について、現在、米国のシンクタンク「核脅威イニシアティブ(NTI)」提案に基づくIAEA核燃料バンクや米国の高濃縮ウランを希釈した低濃縮ウランの備蓄、露国アンガルスクの国際ウラン濃縮センター(IUEC)での低濃縮ウラン(LEU)備蓄が現実味を帯びつつあり、2008年IAEA総会でも、メカニズム構築の重要性が原子力先進国を中心に議論されているものの、供給保証メカニズムの発動条件などについて、具体的な枠組み構築に関しては合意は見られていない。その理由は何故か、その対応策はあるのか?
まず、核燃料供給保証メカニズムの構築は何故進まないのか、(1) 供給保証は核不拡散に寄与するものなのか、(2) 供給途絶は起こるものなのか、(3) NPT第IV条との関係、(4) 「持つ国」と「持たざる国」の二分化、(5) 原子力発電新興国への必要性、(6) 原子力産業界の立場、(7) 国際機関の役割、の7つの観点から考察した(添付参照)。次回、その2として、考えられる対応策について検討する。
【解説:経営企画部(核不拡散科学技術センター兼務) 小林、政策調査室 田崎】