米印原子力協力の実現に向けた進展は、インド国内、特に連立与党に閣外協力をしている左派勢力の反対によって停滞していたが、7月に入って状況に急展開が見られたので、一連の動きの概要を報告する。
1. サマージワーディー(Samajwadi)党からの米印原子力協力への支持の取り付け
報道によれば、シン首相は、7月7日、北海道洞爺湖サミット拡大会合出席の途次、米印原子力協力に関するサマージワーディー党(インド北部を基盤とする社会主義政党)の支持の取り付けにより、閣外協力の左派政党が政権支持をとりやめたとしても、政権維持の見通しが立ったことから、IAEA保障措置協定の承認に向け、近くIAEAに接触すると述べた。
現在、左派政党は59議席を有しており、仮に左派政党の支持を失えば、過半数に44議席足りなくなることになるが、39議席を有するサマージワーディー党及び小政党の支持を取り付けることにより、過半数を維持できる見通しが立ったものと考えられる。
2. 左派政党の現政権に対する支持取下げ
7月9日、左派政党は現政権への支持取下げ声明を以下の理由などとともに発表し、シン首相の優先順位は米国との約束を守ることにある、と強く非難した。
・左派政党の強い反対にもかかわらず米印原子力協力協定の交渉を行ったこと。
・IAEAとの保障措置協定の内容を国民に知らせず、IAEA理事会の承認を求めようとしていること。
・保障措置協定のテキストが連立与党-左派政党構成の委員会に提示されておらず、これは2007年11月の連立与党・左派政党間の合意を無視したものであること。
・シン首相が、左派政党に通知せず、保障措置協定についてIAEA理事会に承認を求める声明を表明したこと。
3. 米印首脳会談
同日、洞爺湖にて、ブッシュ大統領とシン首相は首脳会談を実施したが、会談後の共同記者会見においては、米印原子力協力については、その重要性について簡単に言及するのみであった。なお、7月10日のホワイトハウススポークスマンの記者会見においては、シン首相が両国にとって重要な米印原子力協力を進展させようとしていることへの評価が示された。
4. インド-IAEA間の保障措置協定の承認に向けた動き
7月9日、IAEAは、プレスリリースで、インド政府の要請により、「民生原子力施設の保障措置の適用に関するインドとの協定」(案)を理事会のメンバー国に回付した旨発表した。同プレスリリースによれば、IAEA理事会議長はメンバー国との間で、同協定検討のための理事会日程を調整中である由。また、報道によれば、本件議論のためのIAEA理事会は7月28日に開催される予定。
5. 今後の展開
米印原子力協力協定が発効するためには、今後、(1)IAEA理事会での保障措置協定の承認、(2)原子力供給国グループ(NSG)のガイドラインに規定する受領国条件の1つである、包括的保障措置協定の締結に関して、インドに対する特例措置がNSG参加国のコンセンサスによる決定、(3)米国議会による米印原子力協力協定の承認というステップが必要となる。今年は大統領選挙、議会選挙が予定されていることから、米国議会の会期が短いことが想定され、上記(1)、(2)がクリアされたとしても、ブッシュ政権任期中に、すなわち年内に本協定が議会の承認を受け、発効に至るのは極めて難しい状況にあるものと考えられる。
米印原子力協力の実現に向けた進展は、インド国内、特に連立与党に閣外協力をしている左派勢力の反対によって停滞していたが、7月に入って状況に急展開が見られたので、一連の動きの概要を報告する。
1. サマージワーディー(Samajwadi)党からの米印原子力協力への支持の取り付け
報道によれば、シン首相は、7月7日、北海道洞爺湖サミット拡大会合出席の途次、米印原子力協力に関するサマージワーディー党(インド北部を基盤とする社会主義政党)の支持の取り付けにより、閣外協力の左派政党が政権支持をとりやめたとしても、政権維持の見通しが立ったことから、IAEA保障措置協定の承認に向け、近くIAEAに接触すると述べた。
現在、左派政党は59議席を有しており、仮に左派政党の支持を失えば、過半数に44議席足りなくなることになるが、39議席を有するサマージワーディー党及び小政党の支持を取り付けることにより、過半数を維持できる見通しが立ったものと考えられる。
2. 左派政党の現政権に対する支持取下げ
7月9日、左派政党は現政権への支持取下げ声明を以下の理由などとともに発表し、シン首相の優先順位は米国との約束を守ることにある、と強く非難した。
・左派政党の強い反対にもかかわらず米印原子力協力協定の交渉を行ったこと。
・IAEAとの保障措置協定の内容を国民に知らせず、IAEA理事会の承認を求めようとしていること。
・保障措置協定のテキストが連立与党-左派政党構成の委員会に提示されておらず、これは2007年11月の連立与党・左派政党間の合意を無視したものであること。
・シン首相が、左派政党に通知せず、保障措置協定についてIAEA理事会に承認を求める声明を表明したこと。
3. 米印首脳会談
同日、洞爺湖にて、ブッシュ大統領とシン首相は首脳会談を実施したが、会談後の共同記者会見においては、米印原子力協力については、その重要性について簡単に言及するのみであった。なお、7月10日のホワイトハウススポークスマンの記者会見においては、シン首相が両国にとって重要な米印原子力協力を進展させようとしていることへの評価が示された。
4. インド-IAEA間の保障措置協定の承認に向けた動き
7月9日、IAEAは、プレスリリースで、インド政府の要請により、「民生原子力施設の保障措置の適用に関するインドとの協定」(案)を理事会のメンバー国に回付した旨発表した。同プレスリリースによれば、IAEA理事会議長はメンバー国との間で、同協定検討のための理事会日程を調整中である由。また、報道によれば、本件議論のためのIAEA理事会は7月28日に開催される予定。
5. 今後の展開
米印原子力協力協定が発効するためには、今後、(1)IAEA理事会での保障措置協定の承認、(2)原子力供給国グループ(NSG)のガイドラインに規定する受領国条件の1つである、包括的保障措置協定の締結に関して、インドに対する特例措置がNSG参加国のコンセンサスによる決定、(3)米国議会による米印原子力協力協定の承認というステップが必要となる。今年は大統領選挙、議会選挙が予定されていることから、米国議会の会期が短いことが想定され、上記(1)、(2)がクリアされたとしても、ブッシュ政権任期中に、すなわち年内に本協定が議会の承認を受け、発効に至るのは極めて難しい状況にあるものと考えられる。
(情報ソース)
【報告:政策調査室 山村】