核不拡散ニュース No.0085 2008.03.07
<イラン動向:国連安保理、イランに対する新たな追加制裁決議の採択>
3月3日、国連安全保障理事会は、ウラン濃縮活動を続けるイランに対し、追加制裁決議1803を、賛成14、棄権1(インドネシア)の賛成多数で採択した(この決議は、2006年の決議1696及び1737、2007年の決議1747注1に続くもの)。この制裁決議1803は、全ての国連加盟国に対して、イランの核・ミサイル開発関係者の海外渡航禁止措置を講ずることを求めており、海外渡航の警戒・制限を要請した前回制裁決議1747から一歩踏み込んだ内容となっている。しかし海外渡航禁止の対象となるのは、いずれもウラン濃縮、重水生産に直接的に関与し、決議1737と決議1747で既に特定済みの計5名であり、今回の決議1803で核・ミサイル開発関係者として特定された13個人については、海外渡航を警戒・制限するに留まっている。また、海外における資産凍結措置に関しては、上記の13個人に加え、核・ミサイル開発関係団体として新たに12団体に対して適用が拡大されたが、全体的には小幅な制裁強化といえる。
しかし、今回の決議1803で留意されるべき点は、大量破壊兵器拡散に寄与する物質の移転を阻止するための措置として、「積荷の検査」という新たな取締り領域を確保した点にある。決議1803は、イランからの貨物及びイランの特定の運輸会社の運搬による貨物に対し、大量破壊兵器の拡散に関連するとの「正当な理由」がある場合には、国際法及び各国の国内法に準じ、嫌疑のかかる積荷を「inspect:検査する」ことを全ての国連加盟国に求めており、イラン関連の特定の「積荷に対する検査」という文言を初めて決議に明記することで、イランの核開発問題に対する対抗措置として、今後一層、臨検のような強制的な対抗措置が適用されることを予見する動きとして、注目に値する。
注1)過去3回の決議の内、決議1696以外は国連憲章7章41条に則った制裁決議。
【報告:政策調査室 濱田】