核不拡散ニュース No.0076 2007.11.30
<イラン動向:IAEA事務局長報告、遠心分離機3000機の稼動を確認>
11月15日、エルバラダイIAEA事務局長は、理事会においてイランの核開発活動をめぐる国連安保理決議(1737及び1747)、及び未解決問題に対する行動計画の履行状況を報告した。
イランの核開発の現状として、イランがウラン濃縮及び重水製造などの核開発を継続し、商業規模燃料濃縮工場(FEP)における遠心分離機3000機を稼動したことが確認されたことが主要なポイントといえる。他には、継続するイランの核開発と並行し、完成間近のブシェール原子炉への燃料供給に向けて、ロシアの低濃縮ウラン燃料に対するロシア内での検証・封印措置の準備が整ったことが報告され、イランの核開発に対するロシアの関与も今後益々注目される。
一方で、イランの過去の核活動に対する疑惑解明については、IAEAがイランに提出を求めていた核爆発装置製造過程の一つとなり得る加工工程を記した文書のコピーを、イランがIAEAに提出したことが報告され、行動計画履行に対するイランのコミットメントを示すものとして注目される。しかし、その一方で、報告は、イランの核開発が平和目的であるとの結論を導くにはイランの協力姿勢は不十分であるとし、さらなる信頼醸成努力が必要であると強調している。イランの行動計画に対するコミットメントをめぐる賛否入り混じった評価により、安保理による新たな追加制裁決議に関する米英仏独と中露の見解の相違に変化が見られるか否かは予断を許さない。イラン核問題の今後の展開を占う上で、行動計画の履行状況が注目される。
エルバラダイ事務局長報告(概要)、及び同報告に含まれる8月21日合意の行動計画の履行状況についての記述(概要)は別添1及び2を参照のこと。
【報告:政策調査室 濱田】