核不拡散ニュース No.0045 2007.03.07
<国家安全保障会議(仮称)(NSC)の創設へ向けた報告書>
2月27日、NSCの創設に向けた報告書が「国家安全保障に関する官邸機能強化会議」によって取り纏められた。同強化会議は、昨年11月13日に安倍内閣総理大臣を議長とし、他13名のメンバーから構成され、報告書は、昨年11月22日から今年2月27日まで計7回の会議を経て作成された。
報告書によれば、NSCは内閣に置かれ、メンバーは少数精鋭として、基本的には総理大臣、官房長官、外務大臣、防衛大臣が想定されている。また、月に最低二度会合すること、事務局員は専任10〜20人で構成されること、各省庁の情報部門との連携、今後必要な法案を国会に提出することが提言されている。政府は、3月に安全保障会議設置法を改正し、4月に創設を目指すとされる。
(情報ソース)
<日露原子力協力協定の交渉開始の合意について>
2月27-28日、ロシアのフラトコフ首相が来日し、28日に行われた安倍首相との間で会談の中で、日露原子力協力協定の交渉を開始することで合意した。また、フラトコフ首相と甘利経済産業相等との会談では、同首相より、原子力分野における日本からの投資の促進に対する一般的な期待の表明がなされた。
(情報ソース)
日露間では1991年4月18日に「原子力の平和的利用分野における協力に関する協定」が締結されているが(旧ソ連との間で締結、ソ連の崩壊に伴ってロシアが継承)、本協定は、原子力安全、放射線防護、放射線利用、放射性廃棄物の処理・処分等の分野における、情報交換、人材交流等の協力に限定した行政取り決めである。日本とロシアの間では、これまで、解体プルトニウム処分、非核化協力(原子力潜水艦の解体)、FBRサイクルの分野等での協力が実施されてきたが、これまで、資機材の移転が長期にわたり行われるような協力案件はなく、保障措置等の取り決めを含む、包括的な原子力協力協定を必要とするような状況にはなかった。
今回、協定締結の交渉開始の合意に至ったのは、原子力ルネッサンスと称されるように、エネルギーセキュリティ、環境保護の観点から、原子力の果たすべき役割が見直され、今後、ウラン資源を含むフロントエンドの需要がますます激しくなることが予想されることから、日本としても、できる限り資源の供給源を多様化しておくことの重要性の認識に発している。
具体的に協力が検討されているのは、英仏両国に保管されている、日本の電力会社が所有する回収ウランをロシアで再濃縮し、カザフスタンで再転換、燃料加工するという構想であり、回収ウランの有効利用につながる。昨年8月に、小泉首相がカザフスタンを訪問した際、一定の条件の下に、カザフスタンとの原子力協力協定締結の交渉開始に合意したが、今回のロシアとの合意も同じコンテキストの中で捉えることができる。
ただし、実際に協定が締結された場合は、Rosatomがプレス発表の中で述べているように、日本のメーカーによるロシアの原子力発電所への機器の供給や共同企業の設立といった多様な協力が考えられる。また、今後、FBRサイクル分野での協力を更に深化させる可能性を考えた場合に、その環境整備という意義も有している。
今後、交渉を進める上で、問題となり得るのは保障措置の取り扱いであろう。受領国が核兵器国の場合の日本からの移転物等協定対象物の受領国の領域的管轄内にある場合の二国間協定上の取扱いについては、受領国(核兵器国)とIAEAが締結している保障措置協定(ボランタリー・サブミッション)の対象物(協定の適用を受ける)とする(フルスコープではないため、そのための申告等が必要)とともに、IAEAによる査察等が行われない施設に置かれる可能性を考慮した「保障措置適用のための代替措置(substitution)」を含む補助的措置の適用を求めている。ロシアとの協定の中でも同様の取り扱いが規定されるか否かが焦点となる。
昨年7月の米露首脳会談において、米露間の原子力協力協定の交渉開始が合意され、協定締結に向けての事務レベルの協議は進捗していると伝えられているが、実際にいつ署名がなされるかについては、ロシアのイラン問題への対応等を勘案した、高度の政治的判断によるところが大きいと考えられる。日露原子力協力協定の交渉、締結は、米露協定締結のタイミングに微妙に影響されることも考えられ、今後の動向に注目していく必要がある。
【報告:政策調査室 山村】
<中国が原子力軍民両用品・技術の輸出管理に関する条例を改正>
本件については、2月28日に発信された、<核不拡散ニュースNo.0044>において、情報及び解説を送信したところであるが、そのフォローアップとして、本条例の仮訳を送信する。尚、今回の改正で新たに追加されたのは、第16条(税関の権限の強化)、第18条(輸出業者内部の統制メカニズムの構築)、第19条(キャッチオール規制の導入)、第21条(輸出規制に関する諮問委員会の設置)、22条(本条例の違反の場合の措置)、第28条(特殊な区域からの輸出の場合への適用)である。
(情報ソース)
- 中国外務省ホームページ(中国語)
- 条文の仮訳は添付を参照のこと。
米国NSCは、1947年7月26日の国家安全保障法(National Security Act)により、大統領を議長、国務長官並びに国防長官を主要メンバーとし、外交政策や軍事政策を調整するために創設された。大統領とNSCの関係は、大統領とメンバーである主要閣僚との人間関係によってだいぶ異なるところがあるとされる。
現在の定例メンバーは、副大統領、国務長官、財務長官、国防長官、大統領国家安全保障補佐官である。統合参謀本部議長、国家情報長官はNSCへの助言者となる。大統領首席補佐官、大統領顧問、大統領経済政策顧問は、常にNSCに招集され、司法長官及び行政管理予算局長は、所轄に関連するNSCには招集される。他の閣僚や政府高官は、適宜、招集されることになっている注1。
注1)米国ホワイトハウスHP
【報告:政策調査室 濱田】