核不拡散ニュース No.0035 2006.10.26
<北朝鮮の動向>
<イランの核開発問題に関する動向(国連安全保障理事会での対イラン制裁協議会開始に向けての動き、イランによる濃縮活動の拡大)>
10月17日、欧州連合はルクセンブルクで外相理事会を開催し、国連安全保障理事会での制裁協議開始で合意した。EUはこれまで外交による事態の打開を模索してきたが、EUが交渉の前提としてきた、ウラン濃縮活動の停止に、イランが応じなかった為、制裁協議の開始をやむなしと判断した。
一方、ロイター通信が24日、外交筋から得た情報として伝えるところによると、イランは、今月初め、ナタンツの濃縮施設で、164基の遠心分離機から構成される2台目のカスケードを稼動させた。ただし、UF6を注入しない試験運転とされている。訪米中のIAEAエルバラダイ事務局長もインタビューの中で、イランによる濃縮活動の拡大の動きについて言及し、早ければ、来週中にもUF6の注入を始める可能性があると発言した。同事務局長は、ライス国務長官と会談し、北朝鮮、イラン問題について意見交換したとされる。また、その後のジョージタウン大学での講演の中で、イランへの制裁はきかない可能性が高い、イランの究極的目標が核兵器を保有することであるとはまだ確信できないままでいるなどの発言がなされた。
(情報ソース)
- 読売新聞 10月18日、19日
- ロイター通信
- New York Times
現在、米英仏3ヶ国が決議案のドラフトを作成中とされており、国連安保理での協議はまだ開始されていないが(国務省報道官によると、3ヶ国の間では大筋の合意はなされているとのこと)、これまで外交交渉を優先させてきたEUが制裁支持に転じたことで、協議開始に向けた環境が整いつつあることは間違いない。
米国のライス国務長官が、先週、北朝鮮に対する制裁決議の履行についての協議を主目的に、日韓中露の各国を歴訪した際にも、イラン問題について意見交換を行ったものと見られている。
一方で、イランの濃縮プログラムの拡大の動きは、ウラン濃縮活動の停止を要求する国連安保理決議に逆行するものであり、制裁決議採択への動きを加速させる可能性がある。
EUは制裁の段階的拡大を支持しており、現段階の決議案は、核関連に限っての経済制裁等、限定的なものになるとの見方が強いが、安保理が、北朝鮮問題での結束を維持し、イラン問題に対しても明確なメッセージを送ることができるのか、あるいは、イランに対する制裁を課した場合の、自国への経済的利益への影響への懸念等から、中露が難色を示し、安保理に亀裂が生じることになるのか、動向が注目される。
北朝鮮の核実験については、実験直後の10月11日に、核不拡散ニュースで速報としてお知らせしたところであるが、その後、約2週間の間に、国連安全保障理事会による制裁決議の採択及び制裁措置の具体化に向けた協議等の動きが見られる一方で、北朝鮮による追加核実験の可能性も取りざたされている。
この2週間の動きを別添の通りまとめたので参照願いたい。北朝鮮情勢については、今後の核不拡散、安全保障体制に大きな影響を与える可能性があり、引き続き、動向をフォローしていく予定である。
【報告:政策調査室 山村】