核不拡散ニュース No.0032 2006.10.11
<北朝鮮による核実験の実施について(速報)>
- これまでの経緯
- 2005年2月10日
- 北朝鮮が核兵器保有を宣言
- 2005年9月19日 第四回六者会合共同声明
- 北朝鮮は、すべての核兵器及び既存の核計画の放棄、並びに、NPT及びIAEA保障措置に早期に復帰することを約束。適当な時期に、北朝鮮への軽水炉提供問題について議論を行うことに合意。ただし、具体的なスケジュールは明示されず。その後、北朝鮮は米国による金融制裁の解除を求めて六者会合への参加を拒否
- 2006年10月3日
- 北朝鮮外務省は「安全性が徹底的に保証された核実験をすることになる。」との声明を発出(具体的な実施時期は明言せず。)
- 2006年10月6日
- 国連安保理議長声明を全会一致で採択
- 北朝鮮の核実験実施声明に対し、「深刻な懸念」を表明
- 核実験が実際に行われた場合に国連憲章に基づいて行動する。(ただし、国連憲章第7条には言及せず。)
- 六者会合への即時、無条件復帰を要求。
- 2006年10月8日
- 日中首脳会談 共同プレス発表「双方は、核実験の問題を含む最近の朝鮮半島情勢に深い憂慮を表明した。この関連で、双方は、関係方面と共に、六者会合の共同声明に従って六者会合プロセスを推進し、対話と協議を通じて、朝鮮半島の非核化の実現、北東アジア地域の平和と安定の維持のため、協力して共に力を尽くすことを確認した。」
- 核実験
- 朝鮮中央通信の報道(全文)
- 地震波の観測
- 韓国の聯合ニュースによると、韓国の青瓦台(大統領府)は9日、韓国地質資源研究院が同日午前10時35分、北朝鮮北東部の咸鏡北道花台郡でマグニチュード3.58規模の地震波を観測したことを明らかにした。
- 米国地質調査所は、10時35分に、平壌北東385km地点で、マグニチュード4.2の地震を観測。
- 気象庁(日本)は9日午後、「北海道から九州にかけての広い範囲で、同日午前10時37分ごろに地震波を観測した」と発表。観測によると、マグニチュードは4.9で、震源は北朝鮮北東部にあたる北緯41.2度、東経129.2度の地域。震源の深さは不明。同庁では、精度の高い地震観測を行っている精密地震観測室(長野市松代町)のほか、全国でとらえた地震波の分析から地震の規模と震源を推定したが、記者会見した鉢嶺猛・地震津波監視課長は「現時点では、自然のものか、人工的なものか判断するのは難しい」と語った。
- 核実験の規模
- 国連安保理の対応
- 北朝鮮を出入りする船舶の臨検軍事用品の禁輸
- ミサイルに関連する取引の禁止
- 兵器プログラムに関する資産の凍結等
- 日本の対応
- 訪韓中の安倍首相は、塩崎官房長官に対し、情報の収集、分析を指示
- 11:30 首相官邸の危機管理センターに「官邸対策室」を設置
- 塩崎官房長官記者会見
- 気象庁では該当する地震波を分析中で、外務省、防衛庁も関係機関と連絡を取り合っている。
- 事実とすれば、北朝鮮の行動は我が国のみならず北東アジアおよび国際社会の平和と安全に対する重大な脅威で、核不拡散条約(NPT)体制に対する重大な挑戦で、日朝平壌宣言、六者会合の共同声明に違反するもの。日本政府としても厳重に抗議をし、断固として強く非難をする」
- 塩崎官房長官、麻生外相、シーファー駐日大使と会談
- 日米同盟に基づく連携を確認
- 日韓首脳会談
- 「周辺諸国、国際の平和と安全に対する重大な脅威。北朝鮮の核兵器開発・製造は断じて容認できず、断固とした姿勢で対処すべき。」との見解で一致
- そのうえで、国連安全保障理事会での、追加的な厳しい措置を含む決議案の採択に向け、緊密に連携することで合意。
- 日韓首脳会談記者会見
- 日本独自の新たな制裁を検討
- 安倍首相、ブッシュ大統領と電話会談
- 断固とした制裁決議採択で一致
- 各国の反応
- スノー報道官による声明
- 北朝鮮の核実験は、国際社会の意思および、北東アジアの緊張を悪化させる行動をやめるべきだという我々の求めを公然と無視した挑発行為」と強く非難、国連安保理が即座に行動を起こすよう要求。
- ただ、声明では、米国と韓国が北朝鮮の核実験場とみられる場所で地震波を確認したとしているものの、報道官は記者団に「米国はまだ核実験と判断していない」と指摘し、「データを解析中で、何が起きたか正確に見極めようとしているところ」と述べた。
- また、「北朝鮮は米東部時間8日午後9時(日本時間9日午前10時)ごろ、中国に対し、間もなく核実験を実施すると予告。中国は直ちに北京の米大使館に情報を寄せ、米大使館からライス国務長官に通報が入った。ライス長官はハドリー大統領補佐官(国家安全保障担当)に連絡し、ハドリー補佐官がブッシュ大統領に報告を上げた。」尚、同報道官によれば、中国は、日本、韓国にも直ちに伝達したとしている。
- ブッシュ大統領による声明
- 実際に核実験が行われたかどうか、現在、確認中
- 朝鮮によるこうした声明はそれ自体、国際平和と安全保障に対する脅威として、強く非難
- 中国、ロシア、韓国、日本の首脳との間の電話会談で、「核のない朝鮮半島」へのコミットを再確認した。
- 国連安保理による速やかな対応を期待
- 米国は引き続き外交にコミットし続ける。
- 同盟国(韓国、日本)に対し、米国が抑止力や安全保障の提供することを保証。
- 北朝鮮による他の国や非国家主体への核兵器や核物質の拡散を懸念。
- 北朝鮮が国際社会の全面的な反対を無視し、強引に核実験を実施したことに対し、中国政府は断固として反対を表明。
- 北朝鮮が非核化の公約を忠実に守り、情勢悪化につながり得るいかなる行動も一切停止し、6か国協議の路線に復帰するよう強く要求。
- 関係各国に対し、冷静に対応し、あくまで協議と対話を通じて問題の平和解決を図るよう求め、中国は、このために引き続き、たゆまず努力。
- 韓国政府は、北朝鮮による核兵器保有を容認しないという原則に従い、断固とした対応を実施する。
- 北朝鮮による核実験は、朝鮮半島のみならず、北東アジア全体の安定と平和に対し、重大な脅威を与えるものである。
- 北朝鮮による核実験は、2005年9月19日の六者会合での共同声明、2006年7月15日の国連安保理決議1695、1991年の朝鮮半島非核化宣言
- 南北朝鮮の関係への影響を含む、核実験がもたらす結果については、北朝鮮のみが責任を有する。
- 北朝鮮に対し、直ちに核兵器及び関連する計画を放棄し、NPTに復帰するとともに、国際社会の責任あるメンバーとして、国際規範に則って行動するよう求める。
- 我々の軍隊は、韓米同盟に則って、北朝鮮によるいかなる挑発行為に対しても、それを防ぐための準備を十分に整えている。
- 韓国政府は、本件に関し、国際社会との間で緊密な連携をとっており、特に、直ちに国連安保理における議論を開始することを支持する。国内的及び国際的な対応策を調 整するとともに、冷静かつ断固とした措置を実施する。
- 英国
- 仏国
- 北朝鮮の意図
- 核実験の意味
- 今後の展開
- 安保理での制裁決議
- 韓国の政策への影響
- 北朝鮮発の拡散の畏れ
- イラン問題への影響
- 日本、韓国、台湾の核武装に対する警戒論の高まり
- 機構としての対応
「全国の全人民が社会主義強盛大国建設で一大飛躍を創造している激動的な時期に、わが科学研究部門では主体95(2006年)10月9日、地下核実験を安全に成功裏に実行した。科学的打算と綿密な計算によって実行された今回の核実験は、放射能流出などの危険が全くなかったということが確認された。核実験は100%われわれの知恵と技術によって実行されたものであり、強力な自衛的国防力を渇望してきたわが軍隊と人民に大きな鼓舞と喜びを与えた歴史的な出来事である。核実験は、朝鮮半島と周辺地域の平和と安定を守護することに寄与することになる」(実験の場所、規模、回数等の詳細には触れず。)
各国によって見解が分かれている。(韓国:約400-500トン、ロシア:5,000-10,000トン、日本(東大地震研の分析):500-3,000トン)、オーストラリア1,000トン)尚、長崎に投下された爆弾は22,000トン相当
ただし、北朝鮮の主張通り、核実験であったかどうかは、各国政府により確認中である。また、核実験であったとしても果たして成功だったかどうかは現段階では不明。(空気中の放射性核種の分析 に数日を要する場合あり。核実験であった場合は、プルトニウム型であるとの見解が大勢)
9日午前、緊急会合を開催し、その中で、米国、中国、日本、韓国、ロシア、欧州各国は北朝鮮を強く非難米国は、国連憲章第7章に基づく制裁決議案を提示
決議案採択後、30日後に北朝鮮の行動を点検し必要があれば「追加的行動」を取るとの表現で制裁強化を警告
北朝鮮パク国連大使の発言
「安保理は、北朝鮮の科学者や研究者を祝福すべき。実験は完全に成功し、朝鮮半島と地域における、平和と安全の維持、保証に貢献するもの」更に実験を重ねる可能性を問われ、「もう十分ではないか。」
【米国】
米国による厳しい反応は予想されたところではあるが、中韓両国はこれまでよりも厳しい姿勢を示している。
【中国】
外務省声明(10月9日午後)
【韓国】
午前11時15分、緊急閣僚会議を招集して対応策の協議以下の政府声明(要旨)を発出
【ロシア】
ロシア国防省ベルホフツェフ中将は9日、タス通信に対し、「我々の核爆発監視システムはモスクワ時間9日午前5時35分(日本時間同10時35分)、北朝鮮での核実験を検知した。これは100%地下における核爆発だ」と語った。プーチン大統領は、閣僚との会議において「ロシアは核不拡散体制に打撃を与えた北朝鮮の核実験を非難する」と表明。大統領は、北朝鮮核実験実施を国連安全保障理事会で協議するよう外務省に指示するとともに、北朝鮮の六者会合への復帰にも期待を表明。さらに、9日夜じゅうに外務省声明出すとしている。同会議でイワノフ国防相はプーチン大統領に爆発の規模がTNT火薬5000―1万5000トン相当だったと報告した。
【その他】
英外務省は、北朝鮮が地下核実験を実行したとの発表に対して「核実験は極めて挑発的な行為であり、我々は断固とした対応を取る用意がある」との声明を発出し、「(核実験は)既に緊迫した地域の緊張を高め、国際的な反発を招くだけだ」と強く非難。(英BBC放送)
ドストブラジ外相は、北朝鮮の核実験について「国際安全保障にとってきわめて重大な動き」と非難し、「(国際社会への)窓を閉じる動きだ。北朝鮮の周辺国と連携し、直ちに国連安保理で議論する必要がある」と表明。
核抑止力の誇示による体制の維持
交渉力の強化
「核武装した北朝鮮」を前提とした新たな戦略が求められる。
(核開発の停止の要求→国際監視の下での核廃棄の要求)
中露が国連憲章第7章の下での決議案に応じるか否か。
制裁決議が実効性あるものになるか否か。
これまでの宥和政策を転換するか否か。
他の国や非国家主体への核兵器や核物質の拡散
先日、明らかになった、米国下院スタッフによる北朝鮮問題の報告書では、北朝鮮の核実験による影響として、3国の核武装の恐れが指摘されている。
CTBT観測所のデータを毎日報告
北朝鮮核実験場
韓国の情報機関・国家情報院は9日、非公開の国会情報委員会において、北朝鮮の核実験に関する暫定的な分析結果を報告した。
その報告によると、北朝鮮の核実験場所は、7月に北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2号」を発射した北朝鮮北東部の咸鏡北道花台郡(ファデ郡)・舞水端里(ムスダンリ)地域の高さ360メートルの山に掘られたトンネル内としている。同委に出席した野党ハンナラ党議員が明らかにした。咸鏡北道花台郡(ファデ郡)・舞水端里(ムスダンリ)
(情報ソース)
- Global Security.org
【報告:政策調査室】