核不拡散ニュース No.0027 2007.09.19
<原子力活用のための新メカニズム:燃料供給保証と核不拡散について>
国際原子力機関(IAEA)の総会が昨日、開幕し(18-22日の日程)、初日に日本政府を代表して演説した松田科学技術担当大臣は、6月に米英仏独蘭露の6ヶ国が提案した核燃料供給構想に対する日本政府の対案として、「IAEA核燃料供給登録システム」の創設を訴えた。「燃料供給と核不拡散の保証」に関しては、総会と並行して、今日から21日までの予定で開催される「特別イベント:原子力活用のための新メカニズム:燃料供給保証と核不拡散について」の中で、日本提案も含めた様々な提案、構想が議論される予定となっている。本イベントにのぞむ日本政府の立場について以下の通りまとめたので概要を報告する。尚、日本からは、近藤原子力委員長、日本原子力産業協会の服部副会長が、それぞれ、政府、及び原子力産業界の立場から発表を実施する予定。
また、燃料供給保証に関してのこれまでの様々な提案等をまとめたものを参考資料として添付する。
- 「六カ国構想」(添付の参考資料参照)に対する日本の基本的立場と考え
- 我が国の戦略目標
- 基本的立場
- 「六ヶ国構想」の課題と日本の考え方
- 燃料供給保証メカニズムは、ウラン市場の攪乱に対応した応急対応に焦点が当てられているが、まずは市場攪乱の状態が起きないような予防のためのメカニズムの構築が行われるべき。
- 市場の情報不完全性を改善するために、各国のデータを共有することが望ましい。
- ウラン濃縮に限らずフロントエンド全体(ウラン原料、転換・燃料加工、ウラン在庫・備蓄等)をカバーするメカニズムとすることが望ましい。
- 「六ヶ国構想」は供給国と受領国の「二分法」となっているが、実際には、日本のように濃縮ウラン生産国であるが現時点で輸出しておらず将来輸出する予定のある国のように「二分法」では分類できない国があるため、こうした多様な実態を反映でき、出来るだけ多くの国が自主的に参加・貢献出来るメカニズムにすることが望ましい。
- 日本の提案内容
- 「IAEA核燃料供給登録システム」(IAEA Standby Arrangements System forNuclear Fuel Supply)を創設。
- このシステムに参加意思をもつ国は、自発的に以下の分野の能力(現保有量および供給能力)をIAEAに登録・通知。
- ウラン鉱石供給能力
- 回収ウランを含むウラン備蓄の供給能力
- ウラン転換能力
- ウラン濃縮能力
- 燃料加工能力
- 参加国は、サービス提供能力の利用可能度に応じて、3レベルに区分して、毎年IAEAに通知する。
- レベル1:「商業ベースでの生産やサービス提供を既に国内向けに提供しているが、商業規模での輸出はしていない」。
- レベル2:「商業ベースでの生産やサービス提供を海外向けに実施している」。
- レベル3:「短期間で輸出可能な備蓄を有している」。
- IAEAが果たす役割として、
- 参加各国からの同意書受領により”standby arrangement”を締結するとともに、本システムを管理。
- 寄託者として、参加国から定期的に提供される守備範囲および利用可能レベルの情報と、IAEAが定常的に収集するシステムへの潜在的需要(加盟国の将来の原子力発電計画や、国際的ウラン市場の状況)といった情報のデータベースの管理。
- ある国において、燃料供給が現実に混乱した場合に、仲介者としての機能を果たす。
- システムは仮想的なアレンジメント:参加国が今後も核燃料供給能力を維持管理することを想定しており、IAEAが実際に保持したり貯蔵する必要はない。
我が国が国際的なルールメーキングに貢献することを各国に認識させ、ルールメーカーの一員としてのプレゼンスを確保する。
「核燃料供給国の地位」を現在の濃縮ウラン輸出国(六ヶ国)に固定されることがないように、将来の輸出について柔軟性を確保するようなルールを提唱していく。IAEA総会及び50周年記念イベントの機会に我が国の考え方を提示し、今後の核燃料供給保証に関する議論(専門家会合など)に積極的に参加する姿勢を明確に示す。
「信頼のおける核燃料の利用の為の多国間機構構想(六ヶ国構想)」の目的には賛成であるが、IAEA 6月理事会で表明された各国の懸念を踏まえ、同構想を改善するために提案を行う。
このためには、
*濃縮役務の提供能力を有する6ヶ国(米英仏独蘭露)が2006年6月にIAEA理事会の場で提案した構想。燃料供給国が、受領国が機微な燃料サイクル活動の放棄などの一定の条件を満たすことを前提に、燃料供給を保証するもの。本構想をバックアップするものとして、各国あるいはIAEAにより濃縮ウランを備蓄。(詳細は参考資料を参照)
【市場撹乱の発生予防と、「六ヶ国構想」の補完としての特徴を持つ】
【保障措置協定の遵守がIAEA理事会で確認されていることが条件】
【緊急の供給要請に応える意思はあるにしても、量が限定されるとか、それなりの対応時間が必要】
【緊急の供給要請に対して、利用できる能力の範囲内で速やかに応える意思がある】
【データベースを基に、世界の核燃料供給市場の状況年報を作成することにより、市場の透明性向上に寄与する一助ともなる】
【国際的な不拡散規範を満たしている国のみが、このシステムの恩恵に預かれる。規範はシステム運用開始前にIAEA理事会で規定する】
(情報ソース)
- 燃料供給保証:多国間管理(エルバラダイ提案、ブッシュ提案)
- 核燃料への信頼できるアクセスのための多国間枠組み構想(六ヶ国提案)
- ロシアの核燃料サイクル構想
- IAEA特別イベント 燃料供給保証と核不拡散発表者
- 日本原子力産業協会 服部副会長のIAEA特別イベントの発表骨子
- 米露原子力協力と核テロに対抗するグローバル・イニシアティブ
【報告:政策調査室】