核不拡散ニュース No.0012 2006.04.04
<イラン核開発問題、安保理議長声明を採択>
イランはナタンツのウラン濃縮施設で、164台の遠心分離機の設置を完了した。まだ運転には至っていない。計画では、164台の遠心分離機を基礎単位としカスケー ドを多数設置することでウランを大量生産するものと見られる。
29日このような中で国連安保理は、イランにウラン濃縮と再処理の全面的活動停止及び継続的停止、IAEA理事会の決議遵守を求める議長声明を全会一致で採択した。 法的拘束力はないが、イランに30日以内の活動停止を求める内容となっている。
一方、有志連合によるイランへの経済制裁も視野に入れる米国は、日本がイラン国内で進めているアサガデン油田開発の中止を非公式に要請するなど、制裁に向けた 歩調合せを進めている。
(情報ソース)
- 日経新聞3月17日及び30日
- 産経新聞3月23日及び26日
- 読売新聞3月25日及び26日
- 中国新聞ONLINE3月30日
- 読売ONLINE3月30日
イランのIAEA大使によれば、2006年第4四半期には3,000台の遠心分離機を使った開発研究に移るという。その場合、年間に核兵器1個相当(164台なら約18年で1 個)の兵器級ウランを生産することになる。
今年3月27日に米国の科学・安全保障研究所が纏めた報告書(”The Clocks is Ticking, But How Fast?”, March 27, 2006, ISIS HP)によれば、イランは2009 年に核兵器を保有する可能性があると分析されている。
安保理の声明採択に関しては、中露は安保理での決議や議長声明採択にも消極的な姿勢を崩さずIAEAの枠組みでの解決を望んでいたため、イラン核開発問題につい て初めて全会一致で採択した点で意義は大きい。
しかし、声明文はロシアが原案を最後まで拒み、イラン核開発問題は安保理主導ではなくIAEA主導による問題解決という中露側の主張が強く反映された点で骨抜き の内容となっている。
(補足説明)
2月初旬のIAEA緊急理事会では、イラン核開発問題の国連安保理への付託が決まったが、安保理での審議を3月IAEA定例理事会まで実質1ヶ月間イランの対応を待つこととなった。これに反発したイランは安保理に付託された場合にウラン濃縮開始を政府に義務付けた国内法(昨年12月に成立)に従い、濃縮活動の再開に踏み切るなど強硬姿勢を貫いた。
3月のIAEA定例理事会までにロシアが提案した妥協案も成立せず、国連安保理に議論の場が移った。中露両国は2月初旬に安保理への付託で米欧と合意していたが、最近ではIAEAの枠組みで解決することを望んでいる。
【解説:政策調査室 高橋、大塚】