核不拡散ニュース No.0010 2006.03.02
<イランの核兵器開発問題、ロシアとの協議が大詰め>
イランの核問題を巡り、ロシアで両国間協議が行なわれた。ロシアはウラン濃縮作業をロシアで行うよう提案していたが、ロシアへの濃縮委託は3〜5年以内にすること、イランが濃縮の初期段階を行なえるようにすること、をイランが要求していたとされ基本的な点で相違が解決できぬまま協議は終了した。
しかし、23日からキリエンコ露連邦原子力庁長官がイランを訪問して協議を続けた結果、イラン向けの核燃料製造用ウラン濃縮をロシアに設立される合弁事業に委託することで両国は合意したとされる。ただ、制裁を回避したいイランのカモフラージュという見方もあり詳細は不明となっている。3月6日のIAEA理事会での協議まで残された時間は少ない。
(情報ソース)
- NTI, February 22, 2006, 読売新聞及び日経新聞、2月27日
<仏印が民生原子力協力へ>
2月20日、インドを訪問中のシラク大統領はシン首相と会談し、インドが民生用原子力分野の発展を目的にフランス企業の協力を要請する際の枠組みを設定した原子力協力の共同宣言を発表した。インドは人口増大、温暖化対策、高度成長に伴うエネルギー確保のためにも電力供給量の約3%に過ぎない原子力発電を拡大したい意向と伝えられる。
(情報ソース)
- 産経新聞2月22日、読売新聞2月21日、NTI, February 21, 2006,International Herald Tribune, February 21, 2006
フランスがインドとの協力を進めるには、原子力供給国グループ(NSG)がインドを原子力関連の輸出先として容認することが必要である。また、この時期にインドと協力を進めることはイランや北朝鮮の核問題を複雑にすることも予測される。
【報告:政策調査室 倉崎】
<米印原子力協力、双方に相違>
バーンズ米国務次官は、サラン印外務次官と会談し、両国の原子力協力には依然として意見に食い違いがある旨述べた。
(情報ソース)
- 日経新聞、2月24日
仏印の民生用原子力協力もそうだが、NSGの承認を得る必要がある。また、インドとの協力で原子力技術が核開発に繋がることだけでなく、インドへ外国から核燃料を供給するとインドは自国内の資源をエネルギー供給のために使う必要がなくなり、逆にそれを核開発に利用される可能性があることが懸念される。そのため、協力には燃料が平和的に使用されているかを確認するために、保障措置がどの程度適用されるのかが重要となる。
【報告:政策調査室 大塚】
<米英が臨界前核実験>
ネバダ州の地下核実験場で、2002年以来の米英共同の核実験を実施した。実験の目的は、既存の核兵器の安全性と信頼性の確保のためだとされている。
(情報ソース)
- 産経新聞、2月25日
批判の声はあるが、臨界前核実験は包括的核実験禁止条約(CTBT)が規定している実験的爆発等の対象となっていない。なお、米国はCTBTの批准をしておらず、英国は98年に批准している。
【報告:政策調査室 堀】
<北朝鮮がPSIを批判>
北朝鮮の国連大使がアナン事務総長らに、22日付で、6カ国協議の参加国が大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)に直接的にも間接的にも関与することが朝鮮半島の核問題解決を困難にしている旨書簡を送った。韓国のオブザーバー参加に対する間接的な牽制と見られている。
(情報ソース)
- 四国新聞2月24日、朝日新聞2月26日
輸送中の物資を臨検するPSIは、かつてウラン濃縮装置の部品をリビアに運搬していた船をドイツ・イタリアが連携して摘発し、カーン博士の闇市場が判明しただけでなく、2003年8月に中国から北朝鮮へプルトニウムを抽出するための溶媒が運搬されていたところを米国が中国に通告し国境付近で摘発するなど実効性に優れている(中国は正式にはPSIに参加していないが協力する意向)。北朝鮮がPSIを批判するということは、それだけ北朝鮮にとっても有効な手法である証拠とも言え、今後とも強化していく必要がある。
今後も両国間で協議は継続される見通しだが時間に制約がある。国連安保理での決議直前までイランの動向が注目される。
また、ロシアが積極的にイラン核問題の外交的解決を試みる背景には、ロシアが自国内に設立提唱している国際核燃料センターを、今年ロシアで行われるG8サミットで取り上げる際の弾みにしたいものと推測され注目される。
【報告:政策調査室 大塚】