核不拡散ニュース No.0005 2006.01.18
<核闇市場へのスーダンの関与>
ウクライナのユシチェンコ大統領は、ガス問題で露呈されたロシアへの依存を軽減するためにも自前の核燃料サイクルを確立する意向を示した。核兵器製造の意図はないという。3月に控えた大統領選をにらんだ発言という見方もある。
(情報ソース)
- Global Security Newswire, 2006年1月5日>
<イランが濃縮関連施設の封印を解除>
国際原子力機関(IAEA)の発表によると、Natanz、Pars Trash、Farayand TechniqueにおけるP−1遠心分離機部品、マルエージング鋼、高強度アルミニウム、遠心分離機製造機器、六フッ化ウラン入りシリンダー、パイロット燃料濃縮施設の工程機器などに取り付けられている封印を、2006年1月10日からイランが解除し始めたことをIAEA査察官が確認。イランによると、研究目的のために小規模の遠心分離機カスケードを設置して六フッ化ウランガスを供給するとともに、P−1遠心分離機用の新たな部品も製造するかも知れないという。カスケード室及び六フッ化ウランの供給・取出点はIAEAの封じ込め・監視下に置かれ続けるというが、IAEAエルバラダイ事務局長は重大な懸念を表明し、イランに平和的原子力活動の権利を保証する解決の条件として、停止の継続、対話の再開、IAEAへの協力・透明性の提供を掲げた。また、国連安全保障理事会常任理事国の5カ国は、中国の反対により共同声明にはならなかったものの、個別に、濃縮計画の断念、交渉への復帰を求める勧告を発表。
(情報ソース)
- IAEA Press Release, 2006年1月10日、他国内紙多数
イランは、2004年11月に英仏独との間で合意したウラン濃縮関連活動の停止は、産業活動であり研究活動に関するものではないと主張しているが、2005年9月のIAEA理事会等でイランにウラン濃縮関連・再処理活動の再停止等を求める決議(ロシア、中国は棄権)を行っているにもかかわらず、濃縮関連活動を再開したことにより、国連安保理付託の議論が強まるのは必至。イランは、国連安保理で拒否権を持つロシア・中国と、天然ガスパイプライン、油田開発、原発建設、ミサイル導入など、経済的な連携を強化しているが、今回、ロシア・中国も含めて安保理常任理事国が個別とは言え、勧告を発表していることから、ロシア・中国の動きが注目される。ただし、2005年12月に、国連安保理に付託された場合にIAEAに対する全協力の停止を義務付けるイラン国内法が成立していることから、それも踏まえた対応が必要となる。
【報告:政策調査室 倉崎】
<ウラン販売に保障措置を要求>
米国エネルギー省ボドマン長官は、オーストラリアが中国へウランを販売する計画をしていることに理解を示す一方、核拡散の潜在的可能性を軽減するためにも、どんな取引であれ適確な保障措置を適用することが必要である旨述べた。
(情報ソース)
- NTI, 2006年1月11日
中国(核兵器国)とIAEAとの間で締結されている保障措置協定は日・IAEAが締結しているようなフルスコープの協定ではなくボランタリー協定であり、オーストラリアから中国へ販売されたウランにIAEA保障措置が適用されるかについては中豪間でどのような取極(協定)がなされているかに依存すると考えられる。他方、日中原子力平和利用協力協定においては本協定に基づいて受領された核物質等に関し、それぞれの異なる立場に従い、IAEAに対して保障措置を適用することを要請する旨、定められている。なお、日豪原子力協力協定においては、日豪間で移転された核物質は、国際原子力機関(IAEA)との保障措置協定に基づく同機関の保障措置の対象とされ、また、その保障措置が適用されないこととなった場合には、両国間で、IAEA保障措置の原則及び手続きに合致する保障措置制度を適用するために取極を締結することとなっている。
【報告:核不拡散科学技術センター 持地・政策調査室 倉崎】
<米印協力 加速か>
米国上院議員のジョン・ケリーは、論争となっている対インド協力について、"基本的に"支援する、と訪問先のデリーで語った。 昨年7月に署名された米印協力は、NPTに加盟していないインドにとって原子力開発を加速させるものであり、米国内法の改正を伴うものである。
(情報ソース)
- BBC News HP 2006年1月12日
米国がこの協力を推し進める為には、NSG(核供給国グループ)加盟国の承認など、依然として障害があるが、民主党の有力者であるケリー議員の賛意は、少なくとも米国議会の承認という最初のハードルが低くなるという事である。
これまで明らかになっているカーン闇市場ネットワークに、新たにスーダンも関与している可能性があり、今後の調査が注目される。
【報告:政策調査室 倉崎】