CTBT(包括的核実験禁止条約)
1) CTBTの概要
i) 条約の目的、経緯
1996年9月に、宇宙空間、大気圏内、水中、地下を含むあらゆる空間での核兵器の実験的爆発及びその他の核爆発を禁止し、加盟国がそれを順守していることを検証する体制の確立等を規定したCTBTが国連総会で採択されました。日本は即日署名し、1997年7月に国会における承認を経て批准しました。2013年6月現在で183ヶ国が署名、159ヶ国が批准していますが、発効要件国(核保有国を含む44ヶ国)のうち、米国、中国、エジプト、イラン、イスラエルが未批准であり、またインド、パキスタン、北朝鮮が未署名・未批准のため未発効です。
ii) 条約下での核爆発の検知システム
このように条約自体は未発効ですが、将来の条約発効に備えて、あらゆる空間での核実験を探知するための275ヶ所(2013年6月現在)の認証済み監視観測施設(地震波、放射性核種、水中音波、微気圧振動の4種類)から構成される国際監視制度(IMS)が、既に世界中に整備されています。IMSが完成すると、最終的に337ヶ所の観測施設(4種類の観測所321ヶ所及び放射性核種に係わる公認実験施設16ヶ所)で構成されることになります(図1)。
これらの観測施設で得られた測定データは、ウィーン(オーストリア)に設置されている包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)国際データセンター(IDC)に送信され、解析が行われます。これらの観測データ及び解析結果はIDCデータベースで管理されるとともに、要求のあった各国の国内データセンター(NDC)に対して毎日配信されています。これにより、NDC では独自にIMS観測データの解析・評価をすることが可能となっています(図2)。
なお、CTBTは、条約の順守について検証するため、「IMS」に加えて、「協議及び説明」、「現地査察」、「信頼醸成についての措置」という4つの手段からなる検証制度を定めています。
「協議及び説明」は、核兵器の実験的爆発又は他の核爆発の実施を疑わせる事態が発生した場合、締約国が他の締約国やCTBTOとの間で又はCTBTOを通じて、問題を明らかにし、解決するための制度です。
また、「現地査察」は、条約の規定に違反して核実験が行われたか否かを明らかにすること及び違反した可能性のある国を特定するのに役立つ情報を可能な限り収集することを目的として、国際査察団により実施されるものです。現地査察の実施は、締約国が執行理事会に発議し、51ヶ国の執行理事会の理事国のうち、30ヶ国以上の賛成によって承認され、査察官は最大40名、査察区域は1000万平方キロ以内、最大130日間となっています。
さらに、「信頼醸成についての措置」は、鉱山などで実施されている爆発(化学爆発)を核実験又は他の核爆発と誤認しないため締約国が、そのような爆発の実施についてCTBTOの内部機関である技術事務局に通報するなどの協力を行う措置です。