この装置は、海水中に存在する溶存無機炭素(DIC:Dissolved Inorganic Carbon)中の放射性炭素を加速器質量分析装置で測定するまでの前処理を自動的に行う装置です。海水中に存在する無機炭素(CO2、HCO3–、CO32–)を燐酸により海水中のpHを下げ窒素でバブリングすることにより二酸化炭素として抽出します。この際同時に放出される水分等の不純物は約—70ºCのトラップに捕集することにより二酸化炭素を精製します。精製した二酸化炭素は14C測定用、13C測定用、保存用の3種類に取り分けられます。13C測定用は質量分析装置にて13C/12C比を測定します。14C測定用は還元剤である鉄粉末(反応触媒)と水素ガスを混合し電気炉で加熱しグラファイトを作製します。作製したグラファイトをプレス 機を用いてターゲットピースに充填し、AMSで炭素同位体比を測定します。
写真左側の装置は、海水中に存在する溶存有機物(DOC:Dissolved Organic Carbon)中の炭素を二酸化炭素して抽出する装置です。海水4ℓに酸素ガスを加え紫外線を照射することにより、溶存有機物を酸化させ二酸化炭素として抽出します。この際同時に発生する塩素ガスはヨウ化カリウムに吸着させ、水蒸気はドライアイスとエタノールの混合溶液でトラップします。精製した二酸化炭素からターゲット作製までの処理はDICの時と同様に行います。
写真右側の装置は、粒子状または炭酸カルシウム中の炭素を二酸化炭素として抽出するガラスラインです。また、グラファイト自動ラインで処理できない試料に対して手動でグラファイト化する際にも使用します。
加速器質量分析装置でヨウ素同位体比を測定するためには、化学形をAgIとして2mg以上が必要となります。ここで海水中のヨウ素抽出法について紹介します。海水中にはヨウ素が50ppb程度、ヨウ化物イオン(I–)とヨウ素酸イオン(IOsub3–) として存在します。海水中にはヨウ素は極少量しか存在しないため試薬のヨウ素を加えます。酸でpHを2程度に下げアスコルピン酸でヨウ素酸イオン (IOsub3–)をヨウ素イオン(I–)に還元することにより化学形を統一します。
次に亜硝酸によりヨウ素イオン(I–)を分子状ヨウ素(I2)に酸化しヘキサンに抽出します。さらに亜硫酸水素ナトリウムで分子状ヨウ素(I2)からヨウ素イオン(I–)に還元することによりヨウ素を精製します。最後に、硝酸銀を加えることによりヨウ化銀(AgI)として回収します。