国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 青森研究開発センター

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加速器質量分析装置(AMS)ams

詳細

イオン源

イオン源は、セシウムスパッター型イオン源です。測定試料はアルミニウム製の円柱状ホルダーの先端にプレスして詰め込まれ、ターゲットホルダー(カローセル)に59個まで装着することができ、コンピューターにより自動的に連続測定できます。

イオン源の原理は、高温に加熱されたタングステンフィラメントにセシウム(Cs)が接触しイオン化され、ターゲット電圧7KV、引き出し電圧35KVに印加された試料の中心に向かって加速照射されます。Csイオンにより試料をスパッタし、試料が表面から離脱する際に負にイオン化され35KeVのエネルギーを持ってイオン入射部に入射されます。また、コンピューターにより試料のCsイオンスパッターによるクレーター(穴あけ)効果を抑え測定精度の向上を図っています。

炭素の放射性同位体である14Cを測定する場合、同じ質量数を持つ窒素(14N)イオン、あるいは炭素の安定同位体(12C)と水素が結合したCH2イオン等が測定を妨害しますが、AMSでは最初に負のイオンをつくるときに電子親和性のない妨害元素(窒素)のイオン化を抑える等測定精度の向上を図っています。

イオン源

イオン入射部

イオン入射部では、イオン源で発生したイオンのうち、測定対象となる質量のイオンを分離して加速器に導入します。炭素用のイオン入射系は、高精度の測定を実現するためのリコンビネーターと呼ばれる入射系を採用しており、4台の45º 電磁石と2台の静電型スロットレンズから構成されます。リコンビネーターは炭素の3つの同位体(12C • 13C • 14C) を同時に入射させることにより、装置に起因する同位体効果を排除しています。初段の2台の電磁石により質量数12 • 13 • 14のイオンが約2㎝間隔に質量分離され、同時に不要のイオンが除去されます。3つの同位体が空間的に分離された軌道を通過するため、12Cのビーム強度を高速回転するチョッパーで約100分の1に低減し、加速器の負担を軽減し、発生するX線を抑えるとともに、14Cのビーム強度を相対的に上げ、分析時間の短縮を図っています。後段の2台の電磁石は、3つのビームを1つに収束し、タンデトロン加速器に入射します。

ヨウ素用のイオン入射系は、入射電磁石が内蔵されたバウンサー機構により、電磁石の磁界を変化させずに高速でイオンの加速エネルギーを変化させ、個々の質量を持ったイオンを逐次透過させ加速部に入射することができます。

イオン入射部

タンデム型加速器部

タンデム型イオン加速器は、高電圧発生部、Q–Snoutレンズ、低エネルギー加速管、荷電変換部、高エネルギー加速管、四重極型レンズにより構成されています。

高電圧発生部の昇圧方式は、信頼性の高い対称型コッククロフトウォルトン型高電圧発生方式を採用し、高電圧ターミナル部(荷電変換部)を最高3MV(300万ボルト)まで昇圧することができます。14C及び129 I 測定中は2.5MV(250万ボルト) に保持されます。

Q–Snoutレンズは、イオン入射部より導入されたイオンを荷電変換部に収束させるためのオートフォーカスレンズです。

加速管はチタン電極と絶縁物を接合したもので、高いコンダクタンスを得るために従来機種に比べ約40%ほど大きい直径(32㎝)の加速管が使用されています。この大口径の加速管により真空排気特性が向上し、高電圧ターミナル近傍で良い真空度が得られる設計となっています。低エネルギー加速管では、負イオンが荷電変換部に向けてターミナル部の電圧分加速されます。

荷電変換部に入射された負イオンは、荷電変換部内のガス(Ar)と衝突することにより電子を剥ぎ取られて正イオンに変換されます。荷電変換された正イオンは、高エネルギー加速管内でさらに加速され、ターミナル部電圧に荷電数を掛けた値のエネルギーを持ち加速管から放出され四重極レンズで高エネルギー質量分析部に向けて収束されています。

タンデム型加速器部

高エネルギーイオン質量分析部

高エネルギー質量分析部では、通常の質量分析装置と同様に加速されたイオンを磁場及び静電場によって質量分離します。

炭素用の高エネルギー質量分析部は、110º 電磁石、90º 電磁石、静電アナライザー、重イオン検出器から構成されています。加速器を通過した12C、13C、14Cイオンは、初段の110º 電磁石により質量分離され12C、13Cイオンビームはファラディーカップにより電流測定されます。14Cイオンは静電アナライザー、90º 電磁石で分析され、重イオン検出器でパルス測定されます。

ヨウ素用の高エネルギー質量分析部は、115º 電磁石、静電アナライザー、飛行時間(TOF:Time of flight)型検出器から構成されています。加速部を通過したヨウ素イオンは、115º 電磁石により質量分離され、127 I イオンビームはファラディーカップにより電流測定され、129 I イオンはTOF型検出器で測定されます。

高エネルギーイオン質量分析部

高エネルギーイオン質量分析部

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