放射能環境動態・影響評価ネットワーク共同研究拠点 年次報告会「若手優秀発表賞」を受賞

廃棄物・環境安全研究グループの本多真紀博士研究員は、2023年2月13日に福島県で開催された年次報告会において2022年度の研究成果を報告し(タイトル:Accelerator mass spectrometry of 90Sr in environmental samples collected in the vicinity of a nuclear power plant)、「若手優秀発表賞」を受賞しました。この賞は本会において優秀な発表をおこなった若手研究者を讃えるものです。

受賞概要

ストロンチウム90 (90Sr、半減期28.9年) の環境中での移行 (生物濃縮) 調査のためには、様々な性状をもつ多数の環境試料を効率良く分析できる技術が適しています。しかし、従来のβ線検出法は膨大な試料量と煩雑な化学分離という課題がありました。

これらの課題解決のため我々は2日程度でSrの精製を完了するシンプルな化学分離スキームと、効果的な90Zr除去 (90Srの測定妨害となる) を可能にする加速器質量分析 (AMS) で高感度に90Srを測定する分析技術を開発しました。

AMS法による90Srの検出限界は、β線検出法の一般的な検出限界の1/30を達成し (<0.1mBq、90Sr/88Sr<1×10-14、1試料あたりの測定時間が60分の場合)、より少量の試料量で90Srの定量が可能です。

更に、開発した分析技術が様々な性状の環境試料に適用可能であることを示すため、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム (SATREPS) 「チョルノービリ災害後の環境管理支援技術の確立」の調査対象場所である、チョルノービリ原子力発電所の冷却水供給池から採取した夾雑物が多い水試料500μLを分析しました。その結果、チョルノービリの水試料では、Srの精製や質量分析における測定妨害元素 (90Zr) の化学分離無しで90Sr濃度 (Bq/L) の定量に成功しました。

拝受した賞状