2020年度 日本原子力学会 核燃料部会 部会賞「学会講演賞」を受賞

燃料安全研究グループの田崎雄大職員は、2020年度日本原子力学会秋の大会(2020年9月16~18日)において発表した「MOX燃料ペレットの微細組織の非均質性を考慮した核分裂生成ガス放出モデルの検討」について、日本原子力学会核燃料部会の部会賞「学会講演賞」を受賞しました。この賞は、核燃料に着目した研究について日本原子力学会で優れた発表を行った若手研究者や技術者を讃えるものです。

受賞概要

混合酸化物 (MOX)燃料ペレットは、劣化UO2粉末とPuO2粉末を混合して製造されるため、製造法によってはPu含有率の高い部分と低い部分が混在した非均質な微細組織となります。燃料ペレットが原子炉内で照射を受けた際生じる核分裂生成物(FP)ガスの生成、蓄積や放出など、燃料の健全性を評価する上で重要な現象も、実際にはこうした非均質性の影響を受けつつ進行します。JAEAでは、照射下の燃料挙動を評価するためのツールとして、FEMAXI-8コードを開発してきましたが、同コードのモデルでは従来、ペレットを均質なものと仮定して扱っており、FP移行に係る微細組織の非均質性を陽に取り扱えませんでした。

本研究では、Pu含有率の高い領域(いわゆるPuスポット)とこれ以外の領域のふるまいを独立に追跡できるFPガス移行モデルを開発し、FEMAXI-8に導入しました。改良されたFEMAXI-8コードを使って非均質性を有するMOX燃料の照射実験データを解析したところ、ペレット結晶粒内から粒界を経て燃料棒内自由空間へ至るFPガスの移行が解析上Puスポットで先行し、この効果により、FPガス放出挙動データの解析による再現性が改善しました。

このモデルによって、燃料照射後に測定されたPuスポット部のガス保持量など局所的な情報と解析結果とを直接比較、分析出来るようになり、今後他の様々なMOX燃料照射挙動データの解析に適用することで、MOX燃料からのFPガス放出メカニズムの解明に役立つと期待されます。