日本機械学会 動力エネルギーシステム部門 優秀講演表彰を受賞

燃料安全研究グループのMartin Negyesi博士研究員は、ICONE-25(2017年7月2~6日、中国上海にて開催)において発表した「High-temperature oxidation of Zry-4 in oxygen-nitrogen atmospheres」について、日本機械学会動力エネルギーシステム部門の「優秀講演表彰」を受賞しました。この賞は、同部門が開催するシンポジウム等において優秀な発表を行った若手研究者や技術者を讃えるものです。

東京電力福島第一原子力発電所事故以降、原子力発電所において冷却機能喪失や冷却材喪失事故が生じた場合の燃料の安全性が注目されています。燃料の被覆管に使用されているジルカロイ*合金は高温で水蒸気にさらされると酸化します。ジルカロイ合金被覆管の酸化は大きな発熱を伴うこと及び酸化の程度が著しくなると脆化することから原子力発電所の安全性評価上重要です。使用済燃料プールにおける事故等、燃料棒周囲の水蒸気雰囲気中に何らかの理由で空気や窒素が混入した場合にはこの酸化が加速する現象が報告されていますが、酸化の加速が生じる具体的な空気分圧などの条件及び酸化の加速機構については、現在まで十分に明らかとなっていませんでした。

受賞者は、様々な割合の窒素及び酸素を含む雰囲気条件下、800~1380℃の温度域においてジルカロイ-4*被覆管試料の酸化試験を行い、

  1. 酸化挙動は、温度、雰囲気流量及び雰囲気中の窒素分圧に大きく影響され、例えば1200℃における酸化に関しては、 窒素分圧が0~50%の領域では窒素の影響は明確に見られないのに対し60~90%の領域ではその影響が著しくなること、
  2. 酸化温度800℃及び1000℃においては、酸化時間がそれぞれある値に到達すると酸化速度が大きく増加する傾向が現れること、
などを明らかにし、窒素がこの酸化反応において触媒的な役割を果たし酸化を加速させていることを突き止めました。また、広範囲にわたる空気混入割合条件で適用可能なジルカロイ-4の酸化量評価式の提案に加え、酸化条件が材料強度に及ぼす影響についても明らかにしました。これらの優れた研究成果が認められ、今回の受賞に至りました。これらの成果は、原子力発電所における冷却材喪失事故時の安全評価、シビアアクシデント解析コードの高度化、などへの活用が期待されます。

* ジルコニウムを主成分とし、微量のスズ、鉄、クロム等を含む合金。ジルカロイ-4はジルカロイ合金の一種

受賞したMartin Negyesi博士研究員