センター長挨拶

センター長

 原子力利用の安全性を確保し向上していくためには運転を行う事業者ばかりではなく、関連する多くの人々や組織がその実力を高める努力を続け、システム全体のレベルを高めていくことが重要です。東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえて原子力施設の規制基準は大きく見直されました。現在、この基準への適合性審査が進められ、一部の施設は再稼働しています。しかし、基準適合がゴールではありません。単に現行基準を満足するだけでなく、今後も更なる改善を継続する努力が必要です。この「合理的に達成できる安全の最高水準を目指した継続的改善の追求」は国際的な共通認識ともなっています。

 私たちが利用する全ての技術には改善の余地があります。原子力発電施設の実用化以降も様々な改良がメーカーや事業者などによって続けられて来ました。これに加え、潜在的危険性が大きい原子力施設から人と環境を防護するためには、規制を通じた国の監視が重要となります。このための規制基準や判断根拠も継続的に見直していく必要があります。これは、例えば航空機や自動車の安全性が、メーカーの改良や安全基準の改正がその両輪となって向上してきたことと同様です。安全研究センターは質の高い安全研究を行って、国の規制を担う原子力規制委員会を技術的に支援することを最大のミッションとしています。

 効果的な継続的改善を進めるためには、常に施設の状態、潜在的な危険性やその可能性をきちんと把握し、改善策の影響や効果を適切に評価し、重要度に応じて対応する必要があります。このためには、放射線などによる原子力特有の現象にのみならず、自然災害を含めた多様な事象について、安全性への影響の観点から最新の知見を集め、重要な研究を進めて現象や影響を適切に評価するための手法を継続的に整備・改善する必要があります。また、これらを使いこなし、技術的判断ができる専門家の能力を高めていくことも不可欠です。

 安全研究センターでは、JAEAが有する特徴的な大型研究施設であるLSTF、CIGMA、NSRR、RFEF、NUCEFなどを用いた総合実験に加え、重要な現象に着目した小規模な個別効果実験、これらの成果を踏まえた評価モデルや解析コードの整備などを進めています。原子力の安全評価には、原子炉物理、放射線、燃料、熱水力、材料、構造、化学、環境など多様な分野の知見が必要です。安全研究センターでは、11の研究グループがそれぞれの専門性を活かしつつ連携し、軽水炉のみならず再処理や放射性廃棄物のための多様な原子力施設の安全性やシビアアクシデントが発生した場合の人と環境への影響について、幅広い研究を行っています。特に、福島第一事故後はシビアアクシデントの発生防止及び評価に関する研究、緊急事態への準備と対応に関する研究、事故に係わる放射線影響や放射性廃棄物管理に関する研究、福島第一原子力発電所の廃止措置時の安全性確保のための研究に重点を置いています。また、原子力防災分野では原子力緊急時支援・研修センターとの連携を強め、研究成果を緊急時への備えや実働に反映するための取組みを精力的に進めています。

安全研究センター長 中村 武彦

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