用語説明

1)CTBT(包括的核実験禁止条約、Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty)

核兵器廃絶に向けた重要なステップとして、全ての締約国に対して地球上のあらゆる場所における核兵器の実験的爆発及び他の核爆発を禁止するとともに、これらの実験的爆発及び他の核爆発が行われた場合には、国際的な検証活動による核爆発の事実確認をする仕組みを規定することにより、核兵器の拡散防止を目指すもの。発効要件国である44カ国中8カ国が未署名あるいは未批准のため、本条約は未発効である。

2)国際監視制度(IMS:International Monitoring System)

条約に定められた地震波監視170カ所、放射性核種監視80カ所(内40カ所で希ガス観測も実施)、水中音波監視11カ所、微気圧振動監視60カ所、及び公認実験施設16カ所からなる計337カ所の監視観測施設とウィーンにある国際データセンター(IDC)、各国の国内データセンター(NDC)5)をネットワークで結ぶ国際的な監視制度。既に85%の観測施設が稼働しており、IDCを通じて各国NDCにデータ配信が日常的に行われている。国際協力の下でIMSから得られるデータは、地球規模で収集される品質管理の確立したものであり、核実験抑止力としての国際的監視体制に寄与するのみならず、早期津波警報網や原子力災害監視等への利用の他、種々の科学研究目的にも応用されている。

3)包括的核実験禁止条約機関準備委員会(Preparatory Commission for the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty Organization)

条約に規定された国際監視制度等を整備するため、1996年11月、ウィーンに設立された国際機関。略称CTBTO。現在の組織は、CTBT署名国(2017年6月現在、183カ国)をメンバーとして、最高意志決定機関であるCTBTOの下に執行機関としての暫定技術事務局(PTS:2017年予算規模:約1.3億ドル)を置き、検証体制の整備が進められている。

4)移動型希ガス観測装置(TXL: Transportable Xenon Laboratory)

核分裂生成核種である4つの放射性キセノン(131mXe、133Xe、133mXe、135Xe)を測定対象とし、12時間を1サイクルとして約15m3の大気を捕集し、キセノンガスを分離・精製した後、β-γ同時計数法により放射性キセノンを測定する。全プロセスはコンピュータにより自動制御され24時間連続運転される。これまでの試験による最低検出可能放射能濃度は133Xeに対して約0.2mBq/m3と高感度である。装置一式は可搬型とするため20フィートコンテナ(長さ6.1m x 幅2.4m x 高さ2.4m、重量約10.5トン)に収められ、非常用発電機、気象観測センサー等が付属している。

5)国内データセンター(NDC:National Data Center)

全世界の監視観測施設から得られるデータをIDCから受信し、解析を行い、各締約国が責任を有する条約遵守に係わる判断に関し、技術的評価を行う。その規模等に関しては、各国の裁量に任されており、各国の判断に応じて整備することとなっている。わが国では、原子力機構が放射性核種データに関するNDCとして、スペクトル解析技術や大気拡散シミュレーションに基づく放出源推定解析技術、データベース整備等、基盤的な研究開発、技術開発を行うとともに、国際監視制度で得られるデータの解析評価を日常的に実施している。


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