平成29年6月21日

世界初!ショットピーニングを実用レベルで解析可能なシステムを開発
―溶接継手の強度信頼性向上のために―

公立大学法人大阪府立大学(理事長:辻 洋、以下「大阪府大」)大学院工学研究科航空宇宙海洋系専攻海洋システム工学分野の柴原正和准教授、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄、以下「原子力機構」)物質科学研究センターの秋田貢一ディビジョン長、一般財団法人発電設備技術検査協会(理事長:藤冨正晴、以下「発電技検」)溶接・非破壊検査技術センターの古川 敬所長らの共同研究グループは、原子炉構造物の溶接部における応力腐食割れを抑制するための表面改質技術のひとつである「ショットピーニング」工法によって発生する圧縮力(=圧縮残留応力)を、実用レベルで解析するシステムの開発に成功しました。

■本研究成果のポイント■

図1

開発したシステムで解析した残留応力(溶接部へのショットピ ーニング施工により、配管表面に圧縮力が導入されている)

原子炉溶接部の長期安全性を確保するためには、部材に加わる引張力と腐食環境とが同時に作用して発生する“割れ”である応力腐食割れを防止することが重要であり、その防止策のひとつとして、「ショットピーニング工法」(以下「SP」:Shot peening)が用いられています。SPは、部材表層に圧縮残留応力を導入することで割れの発生を抑えていますが、これまで、SP によって導入される圧縮残留応力や、そのプラント稼働期間中における持続性を予測する手法はありませんでした。そのため、SP の施工条件の決定やSP 施工後の耐応力腐食割れ性の評価のためには、多量の実験を行う必要がありました。

本研究グループは、超大規模超高速非線形構造解析手法である「理想化陽解法有限要素解析手法」に SPの力学モデルを組み込むことで、SP によって導入される圧縮残留応力とその持続性を実用レベルで予測できる解析システムの開発に初めて成功しました。本研究成果は、原子炉溶接部における応力腐食割れ発生リスクの低減に有効であり、また、波及効果として、SP が適用されている船舶や橋梁などの溶接構造物や自動車の機械部品などの開発期間短縮や強度信頼性向上への貢献が期待されます。

本研究は、文部科学省国家課題対応型研究開発推進事業「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業」により実施された「原子力発電機器における応力改善工法の長期安全性評価のための基盤技術開発」(研究代表者:原子力機構 秋田貢一)の成果の一部です。

本成果は、Welding in the World誌2017 年5月号に掲載されました。

参考部門・拠点: 物質科学研究センター

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