【参考資料】

1)中性子準弾性散乱

中性子は、物質を構成する最小基本粒子のひとつである。加速器や研究用原子炉により発生させた中性子ビームを用いて、物質の様々な性質を調べることができる。中性子ビームを分子に当てると、分子に当たった中性子は散乱される。散乱された中性子は、分子とのエネルギーのやり取りのため、そのエネルギーが変化している。このエネルギー変化を伴う中性子の散乱を中性子準弾性散乱という。中性子ビームを分子に当て、準弾性散乱された中性子の方向やエネルギー変化を調べることにより、分子の運動の大きさや速さなどを解析することができる。

2)α-シヌクレイン

ヒト脳神経細胞の末端部に大量に存在するタンパク質で、脳細胞間の信号のやりとりを助ける働きがあると言われているが正確な機能はわかっていない。このタンパク質のアミロイド線維化が、パーキンソン病の発症と密接に関係すると言われている。

3)アミロイド線維

通常のタンパク質は、単独でバラバラに存在し、あるいはいくつかのタンパク質が正しく集まりきちんとした構造体を形成して、機能を発揮する。ところが、何らかの異常により、タンパク質同士が線維状に集合した状態となることがある。このタンパク質の線維状の異常な集合体をアミロイド線維という。パーキンソン病をはじめ、アルツハイマー病や全身性アミロイドーシスなど種々の疾病において、その患者の体内にアミロイド線維が沈着していることが報告されており、アミロイド線維形成とこれらの疾病の発症には密接な関係があると言われている。

4)J-PARC(大強度陽子加速器実験施設;Japan Proton Accelerator Research Complex)

日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が共同で運営している加速器実験施設。陽子加速器群と、物質・生命科学実験施設、ニュートリノ実験施設、ハドロン実験施設の実験施設群から成り、物質科学、生命科学、素粒子物理、原子核物理など幅広い分野の研究が行われている。本研究では、物質・生命科学実験施設の中性子準弾性散乱装置を用いて実験を行った。

5)家族性アミロイドポリニューロパチー

血清中のタンパク質の変異により、全身の様々な臓器にアミロイド線維が沈着し、機能障害を起こす病気の一種で、神経障害を主な症状とするものをいう。種々の病型があるが、特にトランスサイレチンというタンパク質の変異が原因での発症が最も頻度が高い。


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