用語解説:

1) ニュートリノ

素粒子の一つ。スピンは1/2で、電荷は持たない。ディラック型か、マヨラナ型か、いずれであるかは分かっていない。後者であれば、ニュートリノはその反粒子である反ニュートリノでもあるという特異な事が起きていることになり、ニュートリノ2個は互いに相手を消滅させることができる。

ニュートリノは通常の物質とは極めて弱くしか相互作用しないが、物質の創成や宇宙の成り立ちには重要な役割を果たす。

2) 二重ベータ崩壊

通常のベータ崩壊では中性子1個が、陽子、電子、及び、反ニュートリノの3個の粒子からなる組に変わる。それが二回同時に起こるのが二重ベータ崩壊であり、原子核内の2つの中性子が、同時に陽子2つに変わる。

図1に示されているように、二重ベータ崩壊には、2つの電子と2つの反ニュートリノが放出される2ニュートリノ二重ベータ崩壊と、2つの電子のみが放出されるゼロニュートリノ二重ベータ崩壊がある。後者はニュートリノがマヨラナ型である場合に起こり、ニュートリノ2個が互いに相手を消滅させるので結果的にはニュートリノも反ニュートリノも生成されない。後者の発見を目指して世界各地で実験がなされているが、稀少イベントなのでその検出は極めて困難である。

3) 核行列要素

二重ベータ崩壊に関する性質を記述する因子で原子核ごとに固有の値をとる。理論計算して求める必要がある。ニュートリノ質量の自乗は、核行列要素の自乗と二重ベータ崩壊の半減期の積に反比例する。比例係数は既知である。

4) スーパーコンピュータ「京」、ポスト「京」

文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」プログラムの中核システムとして、理化学研究所と富士通が共同で開発した、計算速度10ペタフロップス級のスーパーコンピュータ。

ポスト「京」は、文部科学省フラッグシップ2020プロジェクトのもとで開発されている次世代のスパコン。最大で「京」の100倍のアプリケーション実効性能をめざしている。

5) HPCI戦略プログラム

スーパーコンピュータ「京」を中心としたHPCI(High Performance Computing Infrastructure)を最大限に活用することによって、①画期的な成果の創出、②高度な計算科学技術環境を使いこなせる人材の創出、③最先端コンピューティング研究教育拠点の形成を目指し、戦略的に取り組むべき5つの研究分野(戦略分野)において「研究開発」および「計算科学技術推進体制の構築」を推進する文部科学省のプログラム。

6) 殻模型

原子核中の陽子・中性子は、平均ポテンシャルによって形成される一粒子軌道を運動していると考えられる。殻模型は、それぞれ複数個の活性化された陽子と中性子が様々な軌道上で運動する組み合わせを多数設定し、核力によってそれらの組み合わせが混ざり合うのを評価して原子核の量子多体構造をもとめる理論である。実際には核力の効果を表す行列の対角化計算となり、この行列の次元は活性粒子数に対して階乗的に増加する。本研究では、精度を上げるためにその次元が大きくなり20億に達した。

添付資料:

図1

図1 二重ベータ崩壊の模式図。
(上)2ニュートリノ二重ベータ崩壊。
(下)ゼロニュートリノ二重ベータ崩壊である。今回発表の成果。


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