【参考図】

図1

図1 大西・岩澤(1994)によって提案されたルチル型TiO2 (110)-(1×2)表面の構造モデル(Ti2O3モデル)
側面図に点線楕円で示すように、TiO2(110)表面の上に、Ti原子のまわりにO原子が四面体配位した構造が、同じ高さで2個並んでTi2O3の組成をつくっている。(上面図では原子の位置の高さによって大きさを変えて描いてある。)

図2

図2 本研究で確定したルチル型TiO2 (110)-(1×2)表面の構造(非対称Ti2O3モデル)
側面図に点線楕円で示すように、表面の上にTi2O3の組成の構造が載っている点は大西・岩澤モデルと同じであるが、左右のTi原子の高さを自由に変化させて最適化した。Wangら(2014)も組成と配置を自由に変える理論計算で、組成はTi2O3で配置はほぼ本研究の結果と同じ構造が、最も安定であるとしている。(上面図では原子の位置の高さによって大きさを変えて描いてある。)

【用語解説】

※1 陽電子

素粒子の1種。電子の反粒子で、電荷が正であること以外は電子と同じ性質をもっている。本研究では結晶表面からブラッグ反射(回折)する陽電子を利用した。

※2 全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法

TRHEPDは1992年に一宮彪彦が提唱し、1998年に河裾厚男・岡田漱平がアイソトープ22Na陽電子源を用いて実現した、純粋に日本発の実験手法である。KEKで実現された、世界最高強度の高輝度陽電子ビームを用いると、22Naを用いた陽電子源に比べ約100倍の強度が得られるため、2010年以降は、KEKにおいて原子力機構との共同研究が行われている。

※3 (1×2)超周期構造表面

固体の表面はバルク(内部)と同じ構造のままでは不安定なことが多く、熱処理をすると、表面に特有のさまざまな構造が生じる。図3のように、構造の詳細は違っても周期(結晶構造のくり返しの単位)がバルクと同じ場合を (1×1)構造という。これに対して表面構造の周期がバルクの周期より大きい場合を表面超周期構造という。 今回調べた(1×2)超周期構造は、図1や図2のように、[001]方向はバルクと同じで、[11 ̅0]方向はバルクの2倍の周期が1周期になっている。それに対して (1×1)構造は図3のようにバルクの2周期が表面でも2周期になっている。

図3

図3 TiO2(110)-(1×1)構造(上面図では原子の位置の高さによって大きさを変えて描いてある。)


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