国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

平成27年12月9日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

イータープラズマ加熱装置の超高電圧電源の開発を完了、イタリアへ搬出開始
-核融合燃焼の実証に向けて、大きなマイルストーンを達成-

【発表のポイント】

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下、「原子力機構」という)は、株式会社日立製作所と協力して、現在、南フランスに建設中の国際熱核融合実験炉イーター1)のプラズマを外部から加熱する中核機器である中性粒子入射加熱(以下、「NB」という)装置2)用に、従来技術では実現不可能なコンパクトな超高電圧複数導体送電管の開発に成功しました。本送電管は、イーターに先行してイタリアのRFXコンソーシアムに建設中のイーター中性粒子入射加熱装置実機試験施設(以下、「NBTF」という)3)に設置するため、既に開発した超高電圧直流電源機器とともに、イタリアへの搬出が開始され、本年12月より設置工事が始まります。超高電圧直流電源の開発を完了したことにより、外部加熱によるイーターの核融合燃焼の実証につながる大きなマイルストーンを達成しました。

イーターでは、プラズマ加熱用のイオンビームを発生させるために、100万ボルトの超高電圧電源の開発が必要でした。原子力機構が、この超高電圧電源を製作することとなり、これまでに、100万ボルト絶縁トランス及び超高電圧試験電源を開発してきました。今回新たに、 5つの高電圧(20万ボルトから100万ボルト)電力導体を一つの容器内にコンパクトに収めるという世界に類を見ない超高電圧複数導体送電管の開発に成功しました。

イーターの超高電圧電源では、最大電圧が100万ボルトである複数の高電圧電力を、建屋を貫通させて送電することが求められていましたが、単一の50万ボルトの電力を大気中で送電している従来技術を用いると、絶縁距離の観点から、イーターでは直径20mの送電管が必要となり、建屋を貫通させることが困難という課題に直面しました。そこで、送電管を小型化するために、大気に比べて絶縁距離が1/5である高圧力の絶縁ガスを封入した一つの送電管内に、5つの高電圧の電力導体を束ねて配置する工夫をしました。また、熱伸びや地震の変位(約40mm)による導体の破損や絶縁劣化を回避するために、全長100mの導体を2m毎に分割して碍子で固定し、それぞれを伸びや変位を吸収でき、かつ導電性の良いソケットで接続しました。さらに、送電管の一部に伸びや変位を吸収できるベローズ配管を適応し、かつ送電管の支持脚にスライド機構を設けました。これらの技術開発の結果、送電管の直径は約2mにまで縮小され、機器自身で変位を吸収でき取回しも簡便となる、従来技術で必要なサイズの1/10のコンパクトな超高電圧複数導体送電管の開発に世界で初めて成功しました。

今回開発した電送技術は、核融合だけでなく、産業応用として医療・物理・材料の分野で利用される高エネルギー大電流加速器の分野での活用も期待されます。

参考部門・拠点: 核融合研究開発部門

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