【用語説明】

1) イオンビーム

原子から電子を剥ぎ取った原子核(イオン)をサイクロトロンなどの加速器によって光速の数十分の一から数分の一程度にまで高速に加速したもの。生物学実験やがん治療の他、原子核/素粒子物理学実験に用いられています。原子力機構では、量子ビームの高度利用の一つとして、イオンビームが誘発する突然変異を利用した植物・微生物の有用品種の作出(イオンビーム育種)に活用しています。

2) シロイヌナズナ

学名はArabidopsis thalianaで、アブラナ科に分類される小型の双子葉植物。ゲノムサイズが小さく(約130Mb)、1〜2ヶ月で一世代を経ることができ且つ小型(全長20〜30cm程度)なので、数多くの個体数を扱う遺伝学の実験に最も適した材料と言えます。2000年に植物として初めて全ゲノム配列が解読されたモデル植物です。

3) アントシアニン

植物が合成する赤、青、紫などの多様な色調を発現する一群の化合物。植物色素としての機能に加え、植物体内では紫外線吸収物質としての機能も発揮しています。また、強い抗酸化力を有することが知られており、ブルーベリーのアントシアニンは、眼の疲労感を改善する機能があるとされ、機能性表示食品の機能性関与成分として登録されています。人々の食生活における健康増強物質として、更なる応用が期待されています。

4) 変異体

イオンビームなどの処理を行って、DNAに突然変異が生じた個体のこと。例えば花色や草丈の長短など、親で見られる特徴との違いが明確である場合が多い。

5) ポリフェノール

フェノール性水酸基を分子内に多数有する化合物の総称。アントシアニンやカテキン、イソフラボンといったフラボノイド類はすべてポリフェノールに含まれます。

6) 液胞

植物細胞において、最大の細胞小器官。アントシアニンや糖類などの代謝産物や貯蔵型タンパク質などの蓄積場所であるとともに、老廃物などを分解する機能を有します。

7) 細胞小器官

細胞の中に存在して、独自の機能を発揮する構造体の総称。核、葉緑体、ミトコンドリア、液胞、小胞体、ゴルジ体など。

8) イオン照射研究施設(TIARA)

バイオ技術や材料科学などの先端的科学技術研究専用として、原子力機構高崎量子応用研究所内に設置された世界で最初のイオン加速器施設。AVF型サイクロトロンと3台の静電加速器で構成され、世界に先駆けたイオンビーム育種技術や大気中の生体試料に対する重イオンマイクロビーム照射技術などを用いた様々な研究が行われています。

9) 機能性食品

生体防御や疾患の予防といった、体の調子を整える機能があることを強調した食品。法的に定義された用語でなかったために、平成27年4月1日に施行された食品表示法により、消費者庁が定める一定のルールに基づいて、事業者が科学的根拠について評価を行い、消費者庁に届け出をすることで、事業者の責任の下「機能性表示食品」と表示することが可能となりました。


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