【用語説明】

1)染色体

遺伝子の本体であるDNA分子と多数のヒストンタンパク質などで構成される複合体。放射線が照射された細胞では、この染色体が断片化したり他の染色体と融合するなど、様々な染色体異常が生じることが知られています。また最近では、遺伝子発現が染色体の折りたたまれ方(凝集状態)と深く関係していることも分かりつつあり、染色体のダイナミックな変化が注目を集めています。

2)ヒストン

DNAを巻き付けて染色体を構成することで、細胞核の中にDNAを収納する役割を果たすタンパク質で、その配列などからH1、H2A、H2B、H3、H4などに分類されます。最近の研究で、様々な分子が付加されること(化学修飾)で、DNAの修復を始めとした様々な機能の制御に関わっていることが明らかになっています。

3)円偏光二色性スペクトル測定

光は波の性質を持ちますが、伝播するときの波の振動方向が一定である光を直線偏光、振動方向が円を描く光を円偏光と呼び、回転方向に応じて右円偏光、左円偏光があります。円偏光が物質を通過するとき、左右の円偏光を吸収する度合が異なる場合があります。この時、その物質は円偏光二色性をもつと言います。円偏光の波長ごとに円偏光二色性の大きさを測定したものを、円偏光二色性スペクトルと言います。タンパク質の場合、そのスペクトルの形状はタンパク質の構造に依存して敏感に変化します。したがって、タンパク質の円偏光二色性スペクトルを比較すると、その構造に差異があるかどうかを知ることができます。

4)らせん状の構造

タンパク質は、20種類のアミノ酸がつながってできています。アミノ酸がつながる過程で、アミノ酸の種類やその性質あるいは周りの環境などによって、αへリックスと呼ばれるらせん状やβシートと呼ばれるシート状の構造を取る部分ができます。今回の研究では、傷ついたDNAの修復中に、らせん状の構造を取る部分が増えることが確認されました。

5)化学修飾

タンパク質などに特定の分子が付加されること。ヒストンの場合、リン酸化(H2PO4の付加)やメチル化(CH3の付加)、アセチル化(CH3COの付加)などが知られています。


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