【補足説明】

[1] スキルミオン

渦状の構造をもった磁気スピンの配列のこと(図1)。いくつかの磁性物質中の限られた温度と磁場領域に存在する。一度生成すれば比較的安定な粒子として存在し、電流や温度勾配で動かすことができる。

[2] 情報キャリア

情報の書き込み、消去、読み出しが可能な対象物のこと。ここではスキルミオンの有無を情報の1と0に対応させ、ナノサイズの微小磁気ビットとして用いる。

[3] ユニバーサルメモリ

SRAM、DRAM、NAND型フラッシュメモリといった個々のメモリの利点を同時に併せ持つ次世代型メモリ。具体的には、高速動作性(書き込み、消去、読み出し)、高密度性、不揮発性、低消費電力、高い書き換え耐久性などを兼ね備えたメモリである。

[4] 走査型プローブ顕微鏡

原子間力顕微鏡や磁気力顕微鏡といった探針を用いた走査型プローブ顕微鏡の総称。カンチレバーの先端には曲率半径が数10nm程度の鋭い探針があり、物質との相互作用を通じて表面の原子配列、電子状態、磁区などを可視化することができる。また探針を試料に接触させることでナノメートルの局所領域に応力を加えることもできる。

[5] 一軸応力プローブ

物質の一方向に可変の力が加えられるように開発した実験プローブ。物質をピストンで挟みこみ、マイクロメータで調節しながら力を加えることで連続的に応力を変化させることができる。また超伝導磁石に入れることで低温・磁場下の応力変調が可能となる。本研究では、交流帯磁率測定や中性子小角散乱実験で用いた。

[6] 中性子小角散乱

磁気モーメントを持つ中性子を物質に照射し散乱パターンを調べることで、物質中の磁気構造に関する情報が得られる。特にスキルミオン(数10nm)のような結晶の単位胞(一辺0.1nmオーダ)に対し比較的大きなサイズの磁気配列では、小さな角度に散乱パターンが現れる。そのため小角散乱ビームラインと呼ばれる特別なビームラインで中性子散乱実験を行う必要がある。


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