国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

平成27年10月6日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

イーター・中心ソレノイド・コイル用導体の高い超伝導性能を実証
-イーターの成功へ向け、大きく貢献-

【発表のポイント】

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下、「原子力機構」という)は、南フランスのサン・ポール・レ・デュランスに建設中の国際熱核融合実験炉イーター1)(以下、「イーター」という。)の主要機器の一つである中心ソレノイド・コイル2)(以下、「CSコイル」という。)用に製作している超伝導導体3)(以下、「CS導体」という。)の性能試験を、CSコイルの調達取決めに基づき、イーターと同じ運転条件下で実施し、その高い超伝導性能を実証しました。また、今まで予測できなかった電磁力によるコイル変形が、超伝導状態を維持できる温度(以下、「上限温度」という。)に与える影響を試験し、イーター運転における上限温度を正確に予測可能にしたことは、イーターの安定な運転へ向け大きく貢献する成果です。

CSコイルは、イーターのプラズマ中に電流を流してプラズマ閉じ込め磁場を作る超伝導磁石です。イーターでは、日本がすべてのCS導体を製作し、それを用いて米国がCSコイルを製作する分担です。日本はCS導体の製作を平成24年から開始し、その完成品を米国に逐次発送(第1回目を平成26年6月にプレス発表)しています。CS導体では、上限温度が高い方がコイルのより安定した動作が期待できます。これまでは、スイスにある試験装置を用いて、一部を模擬した条件下で上限温度が設計条件を満足することを確認しました(以下、「模擬試験結果」という。)。イーターの運転条件では、模擬試験結果から予測される上限温度より更に上昇することは分かっていましたが、どの程度まで上昇するかは正確には分かっていませんでした。

このたび、那珂核融合研究所にあるイーターの運転条件下で試験できる世界で唯一の装置を用いて、上限温度を精密に評価しました。その結果、イーターの運転条件下でのCS導体の上限温度は模擬試験結果より更に約0.5度高いことを明らかにし、十分な性能を有することを実証しました。また、今回の結果は、プラズマ電流を流すために不可欠なCSコイルの安定な動作を通じて、イーターの安定な運転に大きく貢献する成果であり、イーターの成功が期待されます。本成果は、超伝導応用分野で最大級の会議である国際磁石会議(10月に韓国で開催)で報告されます。

参考部門・拠点: 核融合研究開発部門

戻る