国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

平成27年7月31日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

核融合プラズマ加熱用中性粒子入射装置の長時間運転技術の開発に成功
~JT-60SA用イオン源での高出力・100秒運転に目処~

【発表のポイント】

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄。以下、「原子力機構」という。)核融合研究開発部門NB加熱開発グループは、韓国原子力研究院(以下、「KAERI」という。)及び国家核融合研究所(以下、「NFRI」という。)の協力を得て、核融合用プラズマ加熱装置の一つである中性粒子入射装置 (以下、「NBI1)」という。) のイオン源において、長時間運転の鍵となるイオンビーム収束性の劣化を抑える運転技術の開発に成功しました。これにより、現在、日欧共同で茨城県那珂市に建設中の超伝導トカマク装置(以下、「JT-60SA2)」という。 )のイオン源において、要求される性能(190万ワット、100秒間)を上回る200万ワット、100秒間の運転に目処を得ました。

JT-60SAで使用するイオン源を実現するためには、従来限界であった30秒よりも3倍長い100秒間の高パワー密度ビームを生成する技術開発が必要でした。そこで、JT-60SAの運転に先立って、NBI開発研究の協力関係にあるKAERI及びNFRIと共同し、イオン源の長時間ビーム生成性能を検証する試験をKAERIの試験装置にて行いました。

試験の結果、30秒よりも長い時間においては、イオンを生成する放電ガス圧の変化に伴ってビーム電流が時間的に変動し、電流値と加速電圧の配分で決まるビーム収束性が劣化していました。この収束性の劣化により、ビームの一部がイオン源内で電極に衝突して熱負荷となり、ビーム生成時間を制限している事を初めて明らかにしました。そこで、放電ガス圧を制御してビーム電流の時間的変動を低減し、かつ印加する加速電圧の配分を細かく制御することでビーム収束性の劣化を抑え、熱負荷を低く保つ長時間運転手法を開発しました。その結果、JT-60SA用NBIで要求されるイオン源一台あたりのイオンビームパワー190万ワットを超える200万ワットのビームを100秒間生成することに成功しました。

この成果は、1,000秒以上の長時間運転が要求される国際熱核融合実験炉(以下、「ITER3)」という。)や連続運転が要求される核融合原型炉(以下、「DEMO」という。)で利用するイオン源の実現に貢献するとともに、半導体用イオン注入装置、大型加速器用イオン源等の長時間運転にも適用でき、産業用装置の経済性の向上に繋がる技術です。

図1
参考部門・拠点: 核融合研究開発部門

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