【補足説明】

図2

文部科学省では、我が国の大学、国立研究開発法人等の研究機関が有する先端的な研究施設・機器を広範な分野や多様な研究等に活用する共用を促進し、基礎研究からイノベーション創出に至るまでの科学技術活動全般の高度化を目的として「先端研究施設共用促進事業」(現在は「先端研究基盤共用・プラットフォーム形成事業」)を実施してきました。高崎研では本事業の下に「明日を創り、暮らしを守る量子ビーム利用支援事業」を推進し、保有するイオン照射研究施設(TIARA)等の先進的放射線照射施設及び実験装置等の共用促進を図っています。この中で利用推進が図られる分野の一つに、TIARAのサイクロトロンからのイオンビームを用いた「有用遺伝子資源創成研究」があります。その研究成果であるイオンビーム育種を普及させるために高い専門知識を有する技術支援員を配し、申請書類の作成支援を含めた施設利用への導入から、利用時に突然変異誘発のための生物照射試料を適切に照射容器内に配置する調整作業や、変異誘発に最適な照射線量等の照射条件の設定、生物試料照射装置を用いたイオンビーム照射、更には照射後の有望な変異系統5) の選別までの試験計画全般に関する技術支援を行っています(左写真)。従来イオンビームに馴染みのなかった生産者が、これらの支援を受けてそれぞれ特色のある花き類についてイオンビーム育種による新品種の育成に取り組んだ結果、以下の三つの民間団体・企業がそれぞれ新たな特徴が付加された園芸植物新品種の作出・販売に至りました。

図3

(1)海部苗木花き生産組合連合会は、全国一の花き生産地である愛知県の生産者団体です。同会に所属する木村園芸は、オリジナル品種の開発を目的としてイオンビームを利用し、アイビーゼラニウム品種「キャンディーローズ」を材料として、既存品種に無い花色や花型の品種育成を目指していました。今回、アイビーゼラニウムでは数少ない八重咲きで花弁にフリンジが入る新品種(KM86)※(上写真右)の作出に成功し、この春から本格的な販売を開始しました。

図4

(2)有限会社精興園は、広島県にある国内最大手の菊専門種苗メーカーです。同社は、保有するキク品種の花色のシリーズ化、耐病性、生育特性等の改良を目的としてイオンビーム育種を利用しました。原品種「カルロスティエラ」から得られた変異系統の内から、原品種よりも濃色で、特に夏場の高温期にも花色の退色が少ない系統(050-8010-02)※(右写真)の作出に成功し、この春から試験販売を開始しました。

(3)横浜植木株式会社は、神奈川県にある総合園芸企業です。同社は、開花期が長く耐暑性に優れたサルビア品種「ファイヤーセンセーション」を販売していますが、花色のバリエーションが限られているため、これを拡大することを目標としていました。今回、ワイン色の原品種からピンク色(SAIB6-7)※(下写真左)及びサーモン色(SAIB6-25)※(下写真右)の新しい花色の変異系統を得ることに成功し、花の少ない夏場の花壇苗としての利用が期待されます。平成28年春から販売を開始する予定です。

図5

※品種名はいずれも現時点では試験系統番号となっています。


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