独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成26年12月12日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

熱の流れが磁場で変わる仕組みを解明
- 磁場を用いた熱流制御の可能性 -

【ポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦祥次郎)先端基礎研究センターの前川禎通 センター長、森道康グループリーダー、オレグ スシュコフ教授 (ニューサウスウェールズ大学オーストラリア)、アレックス スペンサースミス氏(シドニー大学大学院生)らは、絶縁体を流れる熱流が、磁場によって向きを変える現象(フォノンホール効果)を理論的に解明しました。

水の流れが、水路を整備することで必要な場所に必要な量を運ぶことが出来るように、電気の流れは、電気回路を設計することで様々な機能を発揮します。しかし、熱の流れは、温度の高いところから低いところへ向かって拡散していき、制御することが非常に困難です。

電気を通さず磁気を持たない物質(非磁性絶縁体)に温度勾配を与えて、その垂直方向に磁場を加えると、双方に対して垂直方向に温度勾配が現れる現象が観測されます。これは、熱流が磁場によって向きを変えたことを意味しており「フォノンホール効果」と呼ばれています。熱流が、電荷も磁気も持たない結晶中の原子の振動により伝わることは知られていますが、フォノンホール効果について、なぜ熱流が磁場によって向きを変えるのかは謎でした。今回、当研究グループは、この現象の起源が、非磁性絶縁体に極僅かに含まれた磁気を持ったイオン(磁性イオン)によるものであることを、理論計算によって明らかにしました。

本成果は、磁場によって熱流を制御できる可能性を示しており、将来的には原子力エネルギーから発生する熱を電気に変換する熱電発電への応用が期待され、エネルギー変換効率の向上や外部電源喪失時における非常用電源として安全利用に貢献するものへと発展する結果だといえます。

本研究成果は、米国物理学会誌「Physical Review Letters(フィジカル・レビュー・レターズ)」オンライン版に12月15日に掲載される予定です。

参考部門・拠点: 先端基礎研究センター

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