用語説明

※1 大強度陽子加速器施設J-PARC

茨城県東海村に原子力機構と大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構が建設した世界最大規模の陽子加速器群と実験施設群の呼称です。J-PARCはJapan Proton Accelerator Research Complexに由来しています。加速した陽子を原子核標的に衝突させることにより発生する中性子、ミュオン、中間子、ニュートリノなどの二次粒子等を用いて、物質・生命科学、原子核・素粒子物理学などの最先端学術研究及び産業利用を行っています。中性子を利用した研究はJ-PARC内にある物質・生命科学実験施設で行われており、この施設では世界最高性能のパルス中性子を利用することが可能です。

※2 中性子線

中性子は電気的に中性の粒子で、その中性子が束になって進む粒子線。

※3 面心立方構造

立方体の頂点と面の中心に原子が位置している結晶構造。

※4 中性子回折実験

中性子の波としての性質を利用して、回折現象によって結晶構造や磁気構造を調べる実験。X線回折強度は物質中の原子の原子番号に比例するため、原子番号が最も小さい水素は観測しにくいですが、中性子回折強度は原子番号とは無関係で、物質中の水素も観測しやすい。

※5 固溶体

2種類以上の元素が互いに溶け合って形成された均一な固相。結晶の格子点にある原子が他の原子に置き換わる置換型固溶体と結晶格子の隙間に他の原子が侵入する侵入型固溶体があり、今回対象としている鉄の水素固溶体は後者です。

※6 重水素置換

一般に水素を含む物質の中性子回折実験では軽水素を重水素で置き換えた重水素化物が用いられます。中性子は原子核で散乱されますが、干渉性散乱と非干渉性散乱という2つの性質があり、非干渉性散乱は無秩序さを反映して回折を生じない性質で、回折プロファイルのバックグラウンドが増大する原因となります。水素は非干渉性散乱の影響が強いため、干渉性散乱の方が支配的な重水素に置換した試料を用いることで、構造解析に適した回折プロファイルの取得が可能になります。重水素は一般的に軽水素と同じ化学的性質を示し、軽水素と同様に重水素化物を形成することが知られています。

※7 回折プロファイル

結晶では原子が規則的に並んでいるため、等価な原子を含むいろいろな結晶面が規則的に並んでいることになります。X線や中性子線を当てた際に結晶中の原子で散乱されたX線や中性子線を観測すると、結晶面の間隔や面間隔に対応した角度方向にピークとなって現れます。この面間隔や回折する角度と強度の関係を回折プロファイルと呼びます。

※8 リートベルト解析

結晶構造モデルから計算される粉末回折プロファイルが実験で得られた粉末回折プロファイルにできるだけ一致するように結晶構造モデルを最適化する方法です。


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