用語説明

1) 放射性セシウム

福島第一原発事故で環境中に放出された放射性核種のうち、放射性セシウムのCs-134及びCs-137が、現在も空間線量を高めている原因となっている。放射能が半分の値となる半減期は、Cs-134及びCs-137で、それぞれ2.06年及び30.17年である。Cs-134及びCs-137から放出されるガンマ線の平均エネルギーは、それぞれ約694(keV)及び約662(keV)であり、物質中での減弱に大きな差はないため、線量低減係数はほぼ同等となった。

2) 各種建物のモデルを用いた最新の計算シミュレーション手法

原子力機構が中心となって開発を進めているPHITSコード(ガンマ線の他、中性子、陽子、重イオン等、様々な種類の放射線の物質中における挙動をコンピュータで模擬できるコード)を用いて、解析対象とした各種建物のモデルを含む環境下で土壌中等に放射性セシウム(Cs-134またはCs-137)が沈着している条件を仮想し、そこから放出されるガンマ線が地中やその上の空気層を透過して、建物内へ入射していく様子を数値的に模擬した。

3) 年間被ばく線量の推計

福島第一原発事故後の被ばく低減のための対策では、放射線モニタリングで測定された空間線量に基づき、年間の被ばく線量が推計された。ここでは、1日の屋外及び屋内の滞在時間をそれぞれ8時間及び16時間として、屋内の線量は屋外の0.4倍になるという条件を仮定した。

4) 国際原子力機関(IAEA)の技術報告書

国際原子力機関(IAEA)では、放射線事故等の緊急事態の発生時のための対応や評価に関する技術報告書IAEA-TECDOC-225及びIAEA-TECDOC-1162を取りまとめている。その中で、環境に沈着した放射性核種に対する各種建物の線量低減効果データが示されている。

5) 線量低減係数(RF)

屋外の線量から、屋内の線量を推定するために定義した係数である。今回の解析では、屋外のひらけた地面の中央の1m高さで空間線量を計算し、この値に対する各建物内の様々な場所での線量の比として定義した。線量低減係数が1.0の場合、屋外と線量は同じであることを示し、この値が低くなるほど、建物内で線量がより低減していることを表す。


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