独立行政法人 日本原子力研究開発機構

平成26年2月17日
独立行政法人 日本原子力研究開発機構

ナノスケールの極薄磁石の向きを垂直にそろえる新機構を発見
−強力な極薄磁石による超高密度不揮発性磁気メモリ開発に道筋−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦祥次郎)先端基礎研究センターの家田淳一副主任研究員、前川禎通センター長は、米国マイアミ大学物理学科のスチュワート・バーンズ教授(先端基礎研究センター客員研究員兼任)と共同の研究グループにより、厚さわずか数原子層からなる極薄磁石の磁気の向きを、薄膜面に対して垂直に保持する新しいメカニズムを理論的に見出しました。

ハードディスクドライブ(HDD)や磁気ランダムアクセスメモリー(MRAM)に代表される記憶デバイスは、磁石の向きで“0”と“1”の情報を記憶しています。より多くの情報をより小さな領域に記憶するには、情報を保持する一つ一つの磁石を極限まで小さくする必要があります。この要請を満たす新材料として、磁石の向きを膜面垂直に揃えた「垂直磁化膜2)が注目を集めており、そのメカニズムの解明が求められていました。今回、当研究グループは、金属表面や異種材料の界面ごく近傍に存在する特殊な磁場の働きにより、磁石の向きを膜面垂直に揃える新しいメカニズムを解明し、適切な材料選択によりナノスケールの極薄磁石でも極めて強力な垂直磁化膜を作ることができることを理論的に見出しました。また、このメカニズムに基づき、これまで理解できなかった垂直磁化膜に対する電場効果の振る舞いの説明にも成功しています。

本成果は、電場効果を含めた垂直磁化膜の材料開発に基礎的な設計指針を与えるものであり、史上最強のネオジム磁石をも凌駕するナノスケールの極薄磁石の実現への可能性を切り開きました。また、ナノスケールの極薄磁石による不揮発性磁気メモリの超高密度化に寄与し、それによる待機電源が不要な電子機器の実現に大きく貢献すると期待されます。

本研究成果は、英国のネイチャー・パブリッシング・グループが発行するオープンアクセスジャーナル『Scientific Reports』に2月17日付(日本時間2月17日19時)でオンライン掲載されます。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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