独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成25年1月9日
独立行政法人 日本原子力研究開発機構

直流磁場から交流電圧を生み出す機構を発見(お知らせ)
−電子スピンを用いた磁気・電気インバータの開発に道筋−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木篤之)先端基礎研究センターの家田淳一研究員、前川禎通センター長は、磁石の内部に存在する磁壁の運動1)を制御することにより時間変化しない直流磁場から交流の電圧を生み出す機構を見出しました。

1831年、英国の物理学者ファラデーは、時間的に変動する磁場の近くに電気回路を置くと起電力が生じることを発見しました。このファラデーの誘導起電力は、電気と磁気の関わりを支配する電磁気学の根幹をなす基礎法則であると同時に、商業用発電装置から私たちの身の回りの家電製品まで様々な電気機器の動作原理として活躍しています。

近年のナノテクノロジーの急速な進展にともない、極めて微細な磁石を自在に制御することが可能となってきました。この中で、ファラデーの法則とは全く異なる新たなメカニズムによって、磁石の磁気エネルギーを直接電気エネルギーに変換して起電力を生成する方法が発見され、電子の磁気的性質である「スピン」2)に起因するため「スピン起電力」と名付けられました。このスピン起電力は、次世代の省エネルギー技術として期待されるスピントロニクス3)分野において不可欠な構成要素として注目を集めており、その具体的な応用手法の探索は極めて重要な研究課題となっています。

今回、当研究グループは、スピン起電力のユニークな性質を用いることで、直流磁場を交流電圧に直接変換する機構を発見しました。これにより、入力する直流磁場の大きさや、変換に用いる微細な磁石の形状を変えることで出力電圧の交流特性が制御可能となります。本成果は、磁気と電気という異種のエネルギー形態を直接結びつけた、高効率なこれまでにないエレクトロニクス分野を切り開く大きな一歩であり、待機電源が不要な電子素子などへの応用が期待されます。

本研究成果は、米国の科学雑誌『Applied Physics Letters』に12月21日付でオンライン掲載されるとともに、出版元のAmerican Institute of Physicsの注目論文として取り上げられました。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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