独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成24年9月14日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

Mo-99製造国産化に不可欠な高密度MoO3ターゲットの製造技術開発に成功

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木篤之。以下、「原子力機構」という。) は、短半減期であるモリブデン-99(Mo-99)※1製造の国産化技術開発の一環として、高密度MoO3ペレットの製造技術開発に成功しました。なお、このMo-99は、脳血流、心機能、がん等の核医学診断に必要不可欠な、医療診断用ラジオアイソトープ(RI)※2のテクネチウム-99(Tc-99m)※3の原料です。また、Mo-99は半減期が66時間と短半減期であるため、航空機により100%輸入されてきましたが、近年は海外の製造用原子炉のトラブルによる停止や火山噴火による空路障害等により輸入がストップし、核医学診断※4ができなくなり、国民の安全・安心に対して重大な悪影響を及ぼす事例が起きております。

原子力機構では材料試験炉(JMTR)※5を使って、国民へのMo-99安定供給実現の観点から、Moに中性子照射することによって、Moの同位体の一つであるモリブデン-98(Mo-98)をMo-99にする方法、すなわち「(n,γ)法※6」を用いてMo-99製造の国産化技術開発に取り組んでいます。「(n,γ)法」によるMo-99製造の課題は、比放射能(単位質量あたりの放射能の強さ)が低いことであり、それに対する対策の一つとして、照射ターゲットであるMoO3※7ペレットの高密度化に関する技術開発を進めてきました。

従来は、MoO3粉末にバインダー※8として、樟脳を添加、乾燥、圧縮成型して、焼結する、「一軸加圧成型法」にてペレット製造を行っていましたが、MoO3の昇華温度が700℃と低く、高い焼結密度を有するペレットを製造することができませんでした。このため、大電流を流してプラズマを発生させることで低い温度でも焼結を可能とする、「プラズマ焼結法※9」に着目し、「大量製造性」と照射ターゲット再利用のための「ホットラボ内作業性」を念頭に置き、高密度MoO3ペレットの試作試験を行いました。この結果、プラズマ焼結法は、MoO3ペレットの焼結特性及び各種特性(物理的特性、化学的特性、溶解特性等)の相互評価により、密度制御性及び製品純度が優れていることが明らかになり、高密度MoO3ペレットの製造に見通しを得ることが出来ました。

今後は、安全を最優先にJMTRの再稼働を目指し、その後、JMTR付設の照射設備を用いて実証試験を行い、ライフイノベーション※10具現化のため、Mo-99製造国産化の早期実現に取組みます。なお、本成果は、文部科学省原子力基礎基盤イニシアティブにより実施されている受託研究「JMTRを用いた放射化法による99Mo/99mTcの国産化技術開発」における成果の一部です。

以上

参考部門・拠点:大洗研究開発センター

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