独立行政法人日本原子力研究開発機構/独立行政法人理化学研究所

平成24年4月13日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
独立行政法人理化学研究所

超伝導体を用いて磁石のミクロな運動を高精度に測定する原理を発見(お知らせ)
−強磁性体中の磁壁の運動に関する高感度かつ高精度な測定に道筋−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構【鈴木篤之理事長】先端基礎研究センターの前川禎通センター長、森道康グループリーダーと独立行政法人理化学研究所【野依良治理事長】基幹研究所柚木計算物性物理研究室の挽野真一研究員、交差相関物性科学研究グループの小椎八重航副チームリーダーは、強磁性体中(磁石)における磁壁の振動運動が、超伝導接合の電流電圧特性を用いて高感度かつ高精度で観測可能であることを見出しました。

超伝導体の接合(ジョセフソン接合)では、電気抵抗がゼロになり、電流が流れても電圧降下が起こらないことが知られています。ここにマイクロ波を照射すると、その振動数の整数倍の電圧で、シャピロステップと呼ばれる電流電圧特性が階段状に変化する現象が起こります。1990年以降、ジョセフソン接合のこの性質を利用して、世界の電圧標準が規定されており、科学技術の基盤を支えています。

一方、電子の電荷を用いたエレクトロニクスに加えて、スピンの性質も利用するスピントロニクスという分野が注目されています。加速するスピントロニクス技術は、磁性体中の高精度磁化制御を可能にし、強磁性体中の磁壁と呼ばれるミクロな磁区構造を、磁気ランダムアクセスメモリーなどに応用する研究が盛んに研究されています。したがって、このような磁壁の運動を高感度かつ高精度で測定する手段が必要となってきています。

研究グループは、強磁性体で隔てられた超伝導体の接合を考え、その強磁性体中で磁壁が振動運動している場合の電流電圧特性を理論的に導きました。その結果、磁壁の振動数の整数倍に比例定数をかけた電圧のところで、電流電圧特性が階段状に変化しうることを見出しました。そして、その比例係数は、プランク定数と素電荷という基礎物理定数のみで決まることが明らかになりました。電圧はジョセフソン接合を用いて9桁という極めて高い精度で規定されています。また、基礎物理定数も同様な精度で規定されています。磁壁の振動数は、これら超高精度で求まっている物理量のみで決まっているので、同様に高精度で観測が可能になると期待されます。本研究成果は、米国の科学雑誌『Applied Physics Letters』(4月10日付)に掲載されました。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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