【用語解説】

1) グラフェン
黒鉛(グラファイト)を形成する原子1層の部分(炭素原子層)を単位として、炭素原子層が1層〜数層の範囲で積層したシート状の物質。炭素原子層の蜂の巣状のネットワーク構造に起因して、従来の半導体より著しく高いキャリア(電子・正孔)移動度を示すことや長い距離に渡って電子スピンの状態が保持されることなど、電子材料として卓越した性質を示すことが期待されている。
2) スピントロニクス
電子の持つ電荷に加えて電子の磁気的性質であるスピンを利用して情報の伝達や処理を行う新しい電子技術。従来のエレクトロニクスデバイスと比較して、高速動作や低消費電力化、高い機能集積度の実現が可能とされている。
3) エピタキシャル成長
単結晶の基板上において、基板の結晶方位に対して特定の優先方位関係で薄膜が成長することをいう。
4) ラマン分光
分子やナノ炭素内の原子の振動に起因する散乱光の分光分析である。グラフェンの場合、炭素原子層の数や電子状態(電子/正孔のドープ状態)など微視的構造に関する知見を得ることができる。さらに高倍率の顕微鏡と組み合わせることで、サブミクロン程度の微小領域の構造や構造の試料上での分布を調べることもできる(顕微ラマン分光法)。

【論文名・著者名】

"Precise control of single- and bi-layer graphene growths on epitaxial Ni(111) thin film"

(Ni(111)エピタキシャル薄膜上での単層・2層グラフェンの精密層数制御)

S. Entani, Y. Matsumoto, M.Ohtomo. P. V. Avramov, H. Naramoto, S. Sakai

米国物理学会 Journal of Applied Physics 111巻 064324頁 (3月15日号) 発表予定


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