独立行政法人 日本原子力研究開発機構

平成24年3月30日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

グラフェンの精密層数制御と高均質化に成功
−次世代スピントロニクス・エレクトロニクスデバイス開発に向けて大きな進展−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木篤之)先端基礎研究センターの圓谷志郎博士研究員、境誠司グループリーダーらは、グラフェン1)の大面積・層数制御成長法を開発しました。

近年、グラフェンのスピントロニクス2)やエレクトロニクスへの応用が世界的に注目されています。グラフェンは、炭素原子のシートが一層から数層の範囲で積層した物質で、シリコンなどの半導体や銅などの金属よりも高速かつ抵抗が少なく電子を輸送できることや電子のスピン情報の伝達にも適した性質を有することから、次世代のスピントロニクス)やエレクトロニクスの基盤材料として特に有望視されています。しかし、グラフェンは炭素原子の層数によって電気的性質が大きく変化することや、従来の方法で作製したグラフェンのシートは電子の状態がシート内で不均一であることから、高度な電子デバイスやスピントロニクスデバイスに用いるためには広い面積に渡って層数や電子の状態が均一なグラフェンを作製する技術が必要となります。

今回、圓谷博士研究員、境グループリーダーらは、超高真空中に導入したグラフェンの原料分子(ベンゼン)が触媒金属の表面で化学反応してグラフェンが成長する過程を逐次的にモニターすることに成功しました。この方法によりグラフェンの成長条件を明らかにし、グラフェンに含まれる炭素原子層数の精密制御を初めて実現しました。さらに、成長したグラフェンをシリコンなどの基板上に大面積のシートとして転写して構造を調べたところ、層数を精密に制御したグラフェンでは、これまで問題であった電子状態の不均一性が解消され、シート全体に渡って均質な材料が得られることを明らかにしました。

本研究成果によって、グラフェンの電気的性質の精密な制御が可能になり、高度な電子・スピン機能性を有するグラフェンデバイスの創製につながるものと期待されます。

本研究成果は、近日発行される米国応用物理学会誌「Journal of Applied Physics」に掲載されます。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

戻る