独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成24年3月27日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

世界最高性能のプラズマ計測用レーザー装置の開発に成功
−イーターにおいてプラズマ密度・温度の高精度測定が可能に−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木篤之。以下、「原子力機構」という。)核融合研究開発部門ITER計測開発グループの波多江仰紀研究主幹らは、イーター(国際熱核融合実験炉)1)で用いる、従来の2倍の平均出力を持つ世界最高性能のプラズマ計測用レーザー装置2)の開発に成功しました。

原子力機構は、イーター計画においてプラズマ3)の温度及び密度を測定する「周辺トムソン散乱計測装置」4)の開発を担当しています。この計測装置では、平均出力500ワット(1回当たり5ジュールのエネルギーを持つレーザー光を毎秒100回発射)のレーザー装置が必要であり、高出力エネルギーかつ高繰り返し発射が可能なパルスレーザー装置の開発が大きな課題でした。

これまで、原子力機構で開発した平均出力373ワット(7.46ジュール・毎秒50回)のレーザー装置が世界最高性能でした。イーターで必要なレーザー装置を開発するには、繰り返し回数を2倍に上げる必要がありますが、そのためには、熱負荷の制限から1回当たりのレーザー増幅器5)への投入エネルギーを半分に下げる必要があります。しかし、増幅率が低下してしまい、効率的に増幅器内のエネルギーをレーザー光として引き出せないことが大きな問題となっていました。そこで、サマリウム6)と呼ばれる金属を添加した特殊なガラスを増幅器内で用いて、増幅率の改善を妨げている光のノイズを低減し、半分の投入エネルギーでも従来の約2倍の増幅率を実現しました。その結果、効率よく増幅器内のエネルギーを引き出すことが可能となり、従来の平均出力の2倍となる766ワット(7.66ジュール・毎秒100回)を達成し、イーターの要求性能を越えるレーザー装置の開発に成功しました。同装置によりイーターでのプラズマ密度・温度の高精度測定が可能になります。

この高出力エネルギーかつ高繰り返し発射が可能なレーザー装置は、高度ながん治療方法として期待されているレーザー駆動粒子線治療器等にも応用可能です。なお、本研究成果は、5月に米国で開催される第19回高温プラズマ計測に関する国際会議で発表する予定です。

以上

参考部門・拠点:核融合研究開発部門

戻る