独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成24年3月2日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

短波長化が可能なコヒーレントX線発生の原理実証に成功
−レーザー光の高次高調波の短波長化が可能に−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構【理事長 鈴木篤之、以下「原子力機構」】量子ビーム応用研究部門のピロジコフ・アレキサンダー研究員らは、英国ラザフォード・アップルトン研究所、英国ストラスクライド大学、英国クイーンズ大学ベルファスト、ロシア科学アカデミーレベデフ物理学研究所、モスクワ物理工科大学、ロシア科学アカデミー高温研究所、ロシア科学アカデミープロコロフ研究所の協力のもと、相対論的プラズマ1)を利用する方法によって、これまでよりも短波長化が可能なレーザー光の高次高調波と呼ばれるコヒーレントX線2)を発生させることに成功しました。

今回発見した新しい方法により、従来法では困難であった高次高調波の短波長化が原理的に可能であることを実証しました。

物質に当てるレーザー光3)を非常に強くしていくと、およそ千兆分の一秒という、わずかな時間に物質中の電子がレーザー光によってほぼ光の速度にまで加速される、相対論的プラズマ状態が生成されます。今回、出力十兆ワット級の強力なレーザー光をガスターゲットに照射した際に生成する相対論的プラズマから放出されたX線のスペクトルを観測したところ、照射するレーザー光の波長の整数分の一の波長を持つ高次高調波4)と呼ばれるコヒーレントなX線が強く発生することを発見しました。

従来の高次高調波の発生法では、原子や分子につなぎとめられている電子をレーザー光で強く揺さぶって高調波を発生させますが、短波長化のためにレーザー光を強くし過ぎると、電子が原子や分子から完全に離脱してしまい高調波を出せなくなることが問題でした。これに対し今回の方法では、原子や分子とは無関係に、レーザー光とガスターゲットとの相互作用で発生する高密度の電子の集団から高調波が発生していると考えられ、照射するレーザー光の強さをより大きくできます。その結果、従来法の限界と考えられていた波長を遙かに凌ぐ短波長コヒーレントX線の発生が原理的に可能であることを実証しました。

この相対論的プラズマによる高次高調波発生法の普及によって、短波長のコヒーレントX線を利用する研究分野の幅広い展開が期待されます。

本研究は、文部科学省科学研究費補助金23740413「New high harmonic generation mechanism」の一環として、またSTFC(Science and Technology Facilities Council)施設利用助成を受けて実施しました。なお、本研究成果は、2012年3月16日に発行される米国物理学会レター誌Physical Review Letters (Pirozhkov et al.)に掲載予定です。

以上

参考部門・拠点:量子ビーム応用研究部門

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