J−PARCにおける主な地震被害と復旧状況
●主な被害状況
(1)リニアック、シンクロトロンなどの加速器
- 道路、建物周辺の陥没、建物の壁や天井(石膏ボードなど)の崩落、空調ダクト、照明等の脱落・損傷、天井クレーンレールの歪み(機器搬出入作業に影響)
- 加速器地下トンネル部の漏水(壁や天井に生じた微細なひび割れから、地下水が浸み出した)
- トンネル内漏水による真空ポンプなどの一部水没(停電により排水ポンプが稼働できなかったことによる)
- 電磁石や加速空胴の設置位置のずれ(1mm以下の設置精度で並べられている数百台の機器が、数mmから数cmずれた。この程度のずれでも運転には大きな支障になる)
- 建物周囲に設置した大型変圧器やコンデンサ、電源盤等が、周囲の地盤沈下により傾く
(2)各実験施設(中性子、中間子、ニュートリノなどを利用する実験施設)
- 道路、建物周辺の陥没、液体窒素タンク等が沈下により傾く、建物の壁などの崩落
- 地下埋設の給排水設備配管、地上設置の冷却水設備配管などが断裂、ゆがみ、損傷
- 増設部建物の沈下(数十cm、建物ごと沈下)、接続部分の機器が一部損傷
- 遮蔽体のずれ(鉄や鉄筋コンクリート製の、数トンから数十トンの放射線遮蔽体がずれた。数百個の遮蔽体がずれた施設もある)
- 電磁石などの設置位置のずれ
●復旧作業
(1)建物・道路関係
- 陥没した道路、建物周辺の修復、地下埋設配管や電源ケーブルの復旧(一部未修復部有り)
- 建物内部の壁、天井、照明、空調ダクトなどの修復(一部未修復部有り)
- 地下トンネル部の漏水は、ウレタン樹脂を注入して止水
- 沈下した増設部建物は、建物ごとジャッキアップして修復
- 天井クレーンの修復(一部未修復部有り。クレーン移動範囲を制限)
(2)装置関係
- トンネル内漏水は復電によりポンプを稼働して排水、水に濡れたポンプなどは分解点検
- 加速器電磁石や加速空胴は1台1台精密測定を実施、ずれを許容範囲内にまで戻すとともに、一部機器は再設置や架台の交換などを実施、中性子発生用の水銀ターゲットも交換
- 遮蔽体のずれも1個1個取りはずして修復、再設置の際にはズレ止めの金具を追加
- 傾いた大型変圧器やコンデンサ、電源盤などは、ジャッキアップを行って修復、一部架台基礎を打ち直して再設置
- 増設建物の沈下により生じた段差で、接続部分の機器が一部損傷、交換作業を実施
- 傾いた液体窒素タンクは一旦取り外し、基礎を修復して再設置
●ビーム試験
- リニアックのビーム試験を12月9日から開始、3GeV・50GeVシンクロトロンは、それぞれ18日、22日からビーム試験を開始
- 物質・生命科学実験施設のビーム試験を12月22日に開始し、ターゲットからの中性子発生を確認。ニュートリノ実験施設も24日にニュートリノ発生を確認。ハドロン実験施設は1月中旬から試験開始の予定