用語説明

1) レーザープラズマ軟X線顕微鏡
レーザープラズマから放射される軟X線を光源とする顕微鏡です。一般的な顕微鏡(光学顕微鏡)が可視光を光源とするのに比べ、より波長の短い軟X線を利用した顕微鏡は高い解像度が期待できます。
2) レーザープラズマ
高い出力を持つレーザーを金属表面等に集光すると、レーザーの強い電界によって金属表面の電子が剥がされ、イオンと電子がバラバラになった状態が作られます。この状態をプラズマと言います。特にレーザーによって生成されたプラズマをレーザープラズマと呼びます。
3) 光学顕微鏡
可視光を光源とした顕微鏡で、一般的に顕微鏡と呼ばれるものの他に、光の干渉現象を利用した位相差顕微鏡や微分干渉顕微鏡、蛍光を利用する蛍光顕微鏡、光源にレーザーを利用する共焦点レーザー顕微鏡等があり、目的に応じて使い分けます。
4) 軟X線
電磁波(光)の一種で、紫外線よりも波長が短くX線よりも波長が長い領域の電磁波を軟X線と呼びます。一般的には約1ナノメートルから100ナノメートルの波長領域を指します。特に、波長2.33ナノメートルと4.37ナノメートルに挟まれた波長領域では、水による吸収に比べ、炭素による吸収が非常に大きくなります。炭素は細胞内の構造を反映することから、この波長領域は顕微鏡の光源として適しています。
5) 瞬時撮像
一般的なカメラでは、高速でシャッターを切ることにより、動きのあるものを止めて撮像することが出来ます。軟X線顕微鏡でも、瞬間的に軟X線を細胞に照射して像を取得することにより、動いている細胞の内部構造の動きを静止させて撮像することが出来ます。これを瞬時撮像または瞬時撮像技術と言います。
6) 高強度レーザー
一般的に市販されているレーザーの出力は100mJ〜1J程度でパルスの時間幅が約20ナノ秒程度(0.05ギガワット)であるのに比べ、原子力機構の保有する高強度レーザーは出力20Jでパルスの時間幅が600ピコ秒(33ギガワット)と非常に強力です。このような強力なレーザーを金属表面等に集光した際に生成されるレーザープラズマから非常に強力な軟X線が放射されます。
7) X線感光材
ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)が代表的です。X線照射後、有機溶剤による現像処理を行うと、吸収したX線量に応じて表面に凹凸が生じることから、これを利用して撮像フィルムとして用います。
8) 細胞核、ミトコンドリア、細胞骨格
細胞内部にある細胞の機能をつかさどる構造物(細胞内器官)です。細胞核は、中に遺伝子を含み、細胞のコントロールセンターのようなもので、細胞の全ての働きを制御しています。ミトコンドリアは、細胞の様々な活動に必要なエネルギーを産生しています。細胞骨格は、細胞の形を維持する働きを持ちます。
9) 電子顕微鏡
高エネルギーの電子を光の代わりに用い、強力な電磁石で試料に集光します。光の波長に比べ電子の波長は非常に短いため、原子レベルの空間分解能を持ちます。しかし、電子は物質の透過性が高くないため、厚い試料の観察が出来ず、細胞を切片化する必要があります。また、電子線での観察のためウランや鉛などでの染色が不可欠です。
10) 密着法
密着法は、高い解像度と広い視野を同時に実現できる点で非常に優れています。X線の光量損失の原因となるX線光学素子を使用せず、X線用の感光材上に直接細胞を貼り付けX線を照射するため、高い感度を有し、高輝度軟X線源と組み合わせることにより水溶液中の試料の瞬時撮像が可能です。
11) 精巣ライディッヒ細胞
哺乳類の精巣にある細胞で、コレステロールから男性ホルモンであるテストステロンを産生し、分泌しています。内分泌細胞の生理的な活動を観察するのに適しているだけでなく、長時間X線感光材上に培養した時、非常に薄く大きく広がるという特徴を持つため、細胞内構造の観察にも適しています。
12) ヘテロクロマチン
クロマチンは、細胞核内に存在するDNAとタンパク質の複合体を言います。通常のクロマチンは細胞分裂期に凝縮され細胞核の中で形をあらわしますが、細胞分裂期以外においても凝縮されている部分をヘテロクロマチンと呼びます。

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