【用語説明】

(注1) 固体中をイオンがあたかも液体のように動き回る物質。銀・銅イオン伝導体では1 Scm-1程度、リチウムイオン伝導体では1 mScm-1程度の値が最高のイオン伝導率とされてきた。特に、高エネルギー密度電池として期待されているリチウム超イオン伝導体で、イオン伝導率と安定性を兼ね備えた物質の開発が望まれていた。ポリマー、無機結晶、無機非晶質などの様々な分野で物質開拓が行われており、その開発は1960年代から始まり、現在も引き続き行われている。(図4に開発の歴史的な経緯と、達成したイオン伝導率を示す。)

(注2) 現在のリチウムイオン電池に用いられている電解質。可燃性であるために、使用には安全装置が必須となる。蓄電池の小型化、低コスト化を実現するために、不燃性固体物質への代替が期待されている。

(注3) 高エネルギー加速器研究機構と日本原子力研究開発機構が共同で茨城県東海村に建設した大強度陽子加速器施設と利用施設群の総称。加速した陽子を原子核標的に衝突させることにより発生する中性子、ミュオン、中間子、ニュートリノなどの二次粒子を用いて、物質・生命科学、原子核・素粒子物理学などの最先端学術研究及び産業利用が行われている。

(注4) 固体物質の結晶構造内でリチウムイオンが移動するために必要な連続的な空間。空間の大きさ、まわりに存在する他の原子との相互作用に伝導率は依存する。

(注5) 電池の構成部材である正極、電解質、負極をすべてセラミックスで構成した電池。原理的に不燃性であり、究極的に安全な電池。主に電解質材料のイオン伝導率が低いことが原因で出力に課題を有する。解決の鍵は電解質材料のイオン伝導率の向上であるとされる。

(注6) 日経エレクトロニクス2010年5月号の特集記事のタイトル。電池の安全性/安定性/長寿命を達成するために、5V系正極材料を用いた電池やポストリチウムイオン電池として注目されているLi-S電池やLi空気電池に固体電解質の検討が進むと結論づけている。特に、「行き着く先は固体電解質」として、「電動車両や定置向け大型リチウムイオン電池では、安全性の確保が最優先事項である。さらに長寿命化を望む声の高まりから「リチウムイオン電池に固体電解質を採用したい」とする電池利用者の声が出ている。一方、携帯機器向け市場では、エネルギー密度300Wh/kgを超えるようなポストリチウムイオン電池の開発に合わせて固体電解質の検討が進むことになりそうだ。」との解説を示している。今回の発見では、ようやく有機電解液を超えるイオン伝導率を持つ固体電解質開発に成功した。

(注7) ガソリン車並みの航続距離を持つ電気自動車の実現のためには、現在の蓄電池の5倍から7倍の容量が必要であるとされている(出典:経済産業省「次世代自動車用電池の将来に向けた提言」平成18年8月)。この目標に向かって、革新電池の開発がNEDOを中心に進められている。

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