平成23年6月17日
J-PARCセンター

震災による物質・生命科学実験施設における実験停止の緊急対応について

平成23年3月11日に発生した東日本大震災により、高エネルギー加速器研究機構(KEK、機構長:鈴木厚人)と日本原子力研究開発機構(JAEA、理事長:鈴木篤之)が共同で運営している大強度陽子加速器施設(J-PARC、センター長:永宮正治)は、研究施設などが大きな被害を受けました。J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)は、中性子やミュオン(※)を利用して世界最先端の研究を行う重要な拠点として、国内外から多数の研究者が共同利用実験に訪れています。震災による被害を復旧するまで、施設の運転や実験を中断せざるを得ない状況になりましたが、長期間の実験停止は多岐にわたる研究技術の発展を停滞させるばかりでなく、次世代を担う若手研究者の育成にも影響しかねません。

このような事態にあたり、J-PARCセンターでは国内外の各実験施設の協力を得て、下記のように運転停止期間中における共同利用実験者を支援する措置を講じることにいたしました。

なお、J-PARCでは年内の運転再開、年度内の共同利用実験再開を目指し、復旧・整備を進めています。

1.受入機関と実験課題

MLFで予定されていた2011年度上期(4月〜11月)に申請されていた実験課題は208件(中性子利用実験184件、ミュオン利用実験24件)でした。申請者及び各機関との調整の結果、実験課題の受け入れを以下のように決定しました(平成23年6月16日現在での決定分)。

【中性子利用実験】

機関(施設) 所在地 実験課題(件)
オークリッジ国立研究所(SNS) 米国 24
ロスアラモス研究所マニュエル・ルハン中性子散乱センター(LANSCE) 米国 5
フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体
(大型放射光施設SPring-8内BL03XU)【※】
兵庫県 1
30

※中性子利用実験課題のうち、放射光利用実験で代替できる課題は放射光施設で受け入れていただくこととなりました。

【ミュオン利用実験】

機関(施設) 所在地 実験課題(件)
理化学研究所仁科加速器研究センターRALミュオン科学研究施設 英国 12
12

また、以下の機関からも協力の申し出をいただいております。

2.実験申請者に対する支援

本件による他機関での実験のうち、KEK採択の課題については、共同利用実験の振り替えという観点からKEKが技術支援などを行う予定です。

また、本件の支援については、日本中性子科学会からも多大な協力をいただいております。

3.参考資料

<物質・生命科学実験施設について>

J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)は、光速近くまで加速されたパルス陽子ビームから生み出される世界最高強度の中性子及びミュオンビームを利用して、物質科学や生命科学研究を行う研究施設です。2011年3月11日時点で、中性子実験装置10台とミュオン実験装置2台が共同利用実験装置として、国内外の研究者に利用されています。

【用語解説】

※ミュオン
ミュオンは、電子と同じレプトン(軽粒子)の仲間に属する不安定素粒子で、天然には宇宙線として地球に降りそそいでいる。正と負の電荷をもつミュオンが存在し、負の電荷をもつミュオンは多くの点で電子と同じ性質を持つが、質量は電子のおよそ200倍、陽子のおよそ9分の1であり、正の電荷をもつミュオンは物質中では水素の原子核(陽子)の同位体のように振る舞う。

以上

参考部門・拠点:J−PARCセンター

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