<補足説明>

※1 スピンの緩和時間
スピンは量子力学の基本量であり、上向きと下向きの2つの状態だけをとる。上向き状態のスピンが散乱されて下向き状態に変化するまでの時間をスピンの緩和時間と呼ぶ。一方で、電荷の緩和時間は物質中の電子と電子が衝突なしに進むことができる時間である。
※2 スピン流
スピンとは、電子の磁石としての性質(地球の自転に似た電子の角運動量)で、電子の電荷の運動である電流に対して、スピンの運動をスピン流と呼ぶ。
※3 スピン蓄積
強磁性体と非磁性体との界面などで、スピン偏極した状態が緩和されずに不均等が保たれている状態。
※4 スピン抵抗
スピンに対して、流れを妨げる影響の指標をスピン抵抗と呼ぶ。
※5 パーマロイ
鉄とニッケルの合金。結晶粒が小さく、結晶磁気異方性が小さいため、磁区構造が制御しやすく、ナノ構造の磁性体によく用いられる。
※6 トンネル磁気抵抗素子
2つの強磁性体電極の磁化の相対角度により抵抗の大きさが変化する。一方の磁化を磁 場に対して感度良く動くように設計すると磁場センサーとして利用できる。
※7 スピンホール効果
強磁性体内では、自発磁化が存在し、電子の動きやすさの指標である移動度は、電子が持つ“小さな磁石”であるスピンに依存するため、電流を流すだけでスピン流が発生する。一方、非磁性体に電流を流しても、スピン軌道相互作用による散乱で、電流に対して垂直方向にスピン流が発生する現象が起こる。この現象をスピンホール効果という。
※8 非局所的手法
電流の流れている部分に生じる電圧を測定する局所的手法に対し、電流の流れていない部分にスピンの拡散伝導を生じさせスピン分極によって発生する電位差を測定する手法を非局所的手法という。
※9 スピンホール伝導率
物質中に電流を流すと、スピン軌道相互作用によりスピンが選択的に散乱され、電流に対して垂直方向にスピン流を生成できる。この電流からスピン流への変換効率をスピンホール伝導率と呼ぶ。

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