【用語解説】

注1)ゼーベック効果
熱流と電流の相互作用現象である熱電効果のひとつであり、温度差をつけた導体中に温度勾配と平行な方向の起電力が生じる現象。熱電変換能の異なる二種の物質を接合した素子は熱電対と呼ばれ、熱エネルギー源や精密な温度計として広く利用されている。
注2)磁性ガーネット結晶
組成式がRFe5O12(R:希土類元素、Fe:鉄、O:酸素)で表わされる化合物。本研究ではランタン(La)を添加したイットリウム(Y)鉄ガーネット、LaY2Fe5O12を用いた。
注3)スピン
電子が有する自転のような性質。電子スピンは磁石の磁場の発生源でもあり、スピンの状態には上向きと下向きという2つの状態がある。齊藤教授らが2006年に発見した「逆スピンホール効果」を利用すると、物質中のスピンの流れ(スピン流)を電気に変換することができる。
注4)スピンゼーベック効果
温度差をつけた磁性体において、温度勾配と平行な方向にスピン流の駆動力(スピン圧)が生成される現象(関連論文1を参照)。近年盛んに研究されているスピントロニクス分野において、汎用性の高いスピン駆動源としての応用が期待されるとともに、逆スピンホール効果と結合することで発電素子としての応用の可能性が示唆されている。
注5)ウィーデマン・フランツ則
金属や半導体において電気伝導度と熱伝導度の比が一定になるという法則で、多くの金属や半導体において成り立つことが示されている。熱電素子の性能指数は電気伝導度と熱伝導度の比に比例するため、通常の金属や半導体を用いた熱電素子では、性能指数に限界があると考えられていた。
注6)逆スピンホール効果
スピン流と垂直な方向に電圧が発生する現象。スピンが物質中を流れると、流れを横向きに曲げる力が働く「スピン軌道相互作用」という現象が以前から知られている。このとき、上向き状態のスピンと下向き状態のスピンでは逆向きの力を受ける。スピン流では上向き状態のスピンと下向き状態のスピンが逆向きに流れているため、両者とも同じ方向に曲げられる結果となり、スピン流の流れと垂直な方向に電圧が発生することになる。スピン情報と電気情報をつなぐ現象として、スピントロニクスにおいて重要である。

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