独立行政法人日本原子力研究開発機構/国立大学法人東北大学
平成22年9月27日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
国立大学法人東北大学

絶縁体からの熱電発電に成功
−グリーン・省エネデバイス開発に道−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長:鈴木篤之)先端基礎研究センターの前川禎通センター長、国立大学法人東北大学(総長:井上明久)の齊藤英治教授(原子力機構先端基礎研究センター客員グループリーダー兼任)、東北大学大学院生の内田健一氏らは、温度差をつけた絶縁体から電気エネルギーを取り出す新しい手法を発見しました。

近年、金属や半導体に温度差をつけると温度の勾配に沿って電圧が発生する現象「ゼーベック効果」注1)を利用した熱電変換素子が、環境負荷が小さく高い信頼性を有するエネルギー源として期待されています。一方で、この現象は導電体中でしか生じず、伝導電子を介した熱伝導によるエネルギーロスが発電効率を下げてしまうため、熱電変換素子の実用化の範囲は非常に限定されていました。

今回、齊藤教授らは絶縁体である磁性ガーネット結晶注2)を用いて、温度差によって電子の磁気的性質「スピン」注3)が流れる現象「スピンゼーベック効果」注4)が絶縁体中で生じることを発見しました。すでに、絶縁体中で生じたスピンの流れを、絶縁体に金属薄膜を取り付けることによって電気エネルギーに変換できることを明らかにしており、これらの二つの原理を用いることで、従来は不可能だった絶縁体ベースの熱電変換素子をつくることができるようになります。

本研究成果によって、熱伝導によるエネルギー損失が小さい絶縁体を熱電変換素子に利用できるようになり、熱電変換素子の設計自由度や設置可能場所の拡大、及び環境に配慮した電力技術開発への貢献が期待できます。

本研究成果は、英国科学誌「Nature Materials(ネイチャーマテリアルズ)」のオンライン版(9月26日付)に掲載されます。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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