用語解説

[1] 核データとは
原子炉は中性子がウラン235やプルトニウム239等と衝突し、核分裂を起こすことによって生じるエネルギーを取り出す装置である。その特性を決めるのは原子炉中にあるウランやプルトニウム等の原子核と中性子との核反応である。このような種々の反応の起こる確率を表すデータを核データと呼んでいる。

図 中性子と原子核の相互作用

[2] JENDL (Japanese Evaluated Nuclear Data Library)の概要と歴史
米国のENDF、欧州のJEFFとともに、日本のJENDLは世界3大評価済み核データライブラリの一角をなす。原子力機構核データ評価研究グループが中心となり原子力機構、大学、関連研究機関、原子力メーカーの専門家が原子力機構シグマ委員会、日本原子力学会のシグマ特別専門委員会のもとで協力して開発している。日本での標準となる核データライブラリで、1970年代の初めより開発を開始し、これまで改良を重ねてきている。原子炉等の適用性の良さについては、定評がある。
 JENDLは下の表に示すように1977年に第一版が完成した後、5〜8年毎に更新してきている。JENDL-3.2までは、天然元素データの収納も行っていたが、JENDL-3.3からは、同位体データの収納を基本とした。これは、計算機技術の進展により、より精度の高い同位体データの高速処理が可能となったことによる。
  JENDL-1 JENDL-2 JENDL-3.1 JENDL-3.2 JENDL-3.3 JENDL-4.0
目的 高速炉 軽水炉・高速炉 汎用 汎用 汎用 汎用
完成年 1977 1982 1990 1994 2002 2010
総核種数* 66+6 173+8 305+19 318+22 335+2 405+1

* 同位体核種数+天然元素核種数

[3] 核分裂生成物(FP)核種とは
入射中性子が引き起こす核分裂反応により生じる核種。核分裂生成物は中性子捕獲反応により中性子を吸収するので、原子炉の挙動を把握するには正確な核データが必要となる。また、長半減期核種の生成量評価は、放射性廃棄物の処理処分にとって重要となる。
[4] マイナーアクチノイド(MA)核種とは
超ウラン元素のうちプルトニウムを除いたもので、ネプツニウム、アメリシム、キュリウム等の総称である。これらの元素は原子炉の運転中に生成されるが、上記のFPと同様に中性子を吸収するので、その反応確率は核データとして重要となる。
[5] ベンチマークテストとは
評価済み核データは公開前にその適用性のテストが行われる。これをベンチマークテストと呼ぶ。評価済み核データを使って単純な体系での実験(臨界集合体を用いた実験や遮蔽実験)を解析し、実験値と解析値の比較から核データの信頼度を確認するものである。JENDL-4.0の場合、熱中性子炉、高速炉、遮蔽等の分野のベンチマークテストを行った。核データ評価とベンチマークテストを同じ組織内で有機的に行っていることは、JENDLの特長で米国や欧州に比べ大きな強みである。

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